Day4 落下(お題:触れる)
頼まれた書類を取ってくるために、地下にある書庫に来た。歴代の認可した道具の書類が山ほどあるため、見渡す限り書類で埋め尽くされている。ある意味、圧巻の光景だった。
地図を使って、書類がある戸棚を探し出し、それを元に戸棚の近くまで移動する。戸棚の番号と地図を見比べながら、進んでいくが、なかなかたどり着けなかった。
ようやく戸棚を見つけ、顔を上げると、目的の書類は棚の上の方にあった。近くにある脚立を使って、棚の近くまで上がっていく。一番上に来たが、まだ届かない。
「背伸びすれば、届くかな?」
手を限界まで伸ばして距離感を確かめる。縦に並べられている書類の下の方に触れた。よし、背伸びすれば取れそうだ。
片手で棚を掴み、もう片手で書類を掴む。取れた――と思った瞬間、体勢が崩れる。その反動で脚立が倒れ、体が宙を飛んだ。
落ちる――!
思わず目を瞑り、体が床に叩きつける衝撃を覚悟した。
だが、叩きつけられる前に、誰かが私のことを受け止め、その者と一緒に床に倒れ込んだ。
「……っ痛!」
おそるおそる目を開けると、床には倒れ込んだグレンさんがうめき声をあげていた。私は先輩に両手で抱きしめられている格好になる。素早くその腕をどけて、体の上から降りる。
「大丈夫ですか!?」
グレンさんは背中をさすりながら、起き上がる。
「大丈夫だ。ケイトは?」
「大丈夫です、グレンさんのおかげです」
グレンさんは表情を緩め、はあっと息を吐き出す。次の瞬間、きっと鋭い視線を向け、怒鳴り声を上げた。
「危ないだろう! 脚立の上でつま先立ちするとか、あり得ないだろう! 崩れ落ちる可能性が高すぎる!」
「ご、ごめんなさい……」
「俺がいなかったら、大怪我していたかもしれないぞ!? もっと気をつけろ!」
グレンさんは立ち上がりながら、私の頭に軽く触れた。
「……優秀な後輩の身に何かが起きたら、俺は自分を責める。だから、無茶はしないでくれ」
落ち着いた声で出される言葉は、あらぶっていた私の心拍数を抑えてくれるようだった。何かと気遣い、助けてくれる先輩には頭が上がらない。
立ち去っていく先輩の後ろ姿を眺める。
その背中が雨の中で傘を渡して去っていた、あの男性とかぶった。
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