♪ Take25 恋路の行方

 ひとみが去り、凛と二人きりになった歩は、凛に自身の本音を漏らす。


「何で丹波先生は俺の恋路の邪魔をするんですか……」


「一世一隅のチャンスだったのに」とまだ先程のひとみへの告白の失敗をうれいている歩に、凛は「それくらいのチャンスで諦めるのならば、恋愛なんて止めておいた方がよいぞ」と無情にも声を掛ける。


 その言葉で益々落ち込む歩に向かって、凛は追い打ちとなる、痛烈な一言を放った。


「先程の質問だがな、十条君。何で君の恋路の邪魔をするのかなんて、そんなことは決まっている。その『何で?』は勿論。君が私のライバルだからに決まっているだろう?」

「ライバルって……。そんな、まさか。丹波先生もひとみさんが好きなんて、言い出すんじゃないでしょうね?」

「そのまさかだとしたら、十条君。君はどうする?」

「っ!?」

「何も私は男性だけが恋愛対象なんて、一言も言ったことは無い」

「……」




 四本のジュースの缶を左の小脇に抱え、ひとみが手を振りながらこちらに駆けて来る。

 その隣りには、遅れてやって来た順平の姿があった。


「皆さんの分の飲み物、買ってきました。皆さん、どれが良いですか?」

「私はコーヒーが良いぞ、牧野君」

「俺はコーラが良いな、ひとみちゃん。……何だよ、歩。お前めちゃくちゃ顔色が悪いけど、どうかしたのか?」

「……いや、何でもない」


 今さっきとんでもない台詞を発しておきながら、ひとみと順平の前で何事もなかったかのように声をかける、したたかな凛の姿を見て、「この人にだけは絶対に負けたくない!」と心の底から燃える歩なのだった。




【完】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

無名のエロゲ声優の君が人気少年漫画のドラマCDの主役となるその日まで 生永祥 @4696540

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ