♪ Take24 告白のタイミング

「俺、ひとみさんのこと……」





「この世で一番、素晴らしい声優だと思っています。今までも、そしてこれからも。自分はずっと貴女のファンで居続けます。……なぁ、そうだろう?十条君」

「そうです!俺、ひとみさんはこの世で一番、素敵な声優だと、心の底から思っています。そしてこの思いは永久に不滅です!……って、こんなところで何をしているんですか!?丹波先生!?」


 河川敷に沿って並んで開かれた出店で、先程購入したイカ焼きを頬張りながら、突如訪れた凛が、歩とひとみの間に割って入った。


「イカ焼きを頬張っていたら、君達二人が見えたものだから、声を掛けたのだよ」


 もぐもぐと口を動かして、凛は歩に向かって抗議の声を上げる。


「こんなところで、とは失礼だぞ、十条君。今日君が牧野君と出会うきっかけとなった打ち上げの発起人は、この私だぞ?」


「何て酷い言い草だ、十条君。私の心は大いに傷付いたぞ」と大して傷付いた素振りも見せず、飄々ひょうひょうとした凛が、歩に声を掛ける。


「……本当に傷付いた人間は、むしゃむしゃとイカ焼きを食べ続けたりしませんよ」

 

 そう言って完全に告白のタイミングを逃した歩は、はーっと溜め息を付きながら酷く落胆する。


 そんな歩の様子に全く気が付いていないひとみは、再会した凛に向かって和やかな笑みを浮かべた。


「凛先生!お久しぶりです。お元気でしたか?」

「うむ。こちらはすこぶる健康だぞ、牧野君」

「それは良かったです。……凛先生、イカ焼き塩辛くて喉が渇きませんか?」


 豪快にイカ焼きを一気に頬張った凛の喉を、ひとみは心配する。


「あぁ。確かに。喉が渇いたな。何か飲み物でも買って来ようか」

「あ!それでしたら、私、皆さんの分の飲み物を買って来ますね」

「おぉ、済まないな。牧野君」


 ひとみに飲み物の購入を託した凛は、「牧野君は本当に気が利くな」と呟くと、少し不機嫌になった歩の方をチラリと見た。

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