♪ Take23 告白のチャンス

――今日こそ、ひとみさんに好きだという絶好のチャンスだ!


 ドラマCDのプロジェクトを進めるうちに、彼女のことが益々好きになった歩は、今日、ひとみに告白することを決意する。


 待ち合わせである河川に掛かる橋の上で、自身に手を振るひとみに向かって、歩は大きく手を振り返した。


「ひとみさん!」

「あ!歩さん。こっちです」


 桜の花見客でごった返す人波を掻き分けて、歩はひとみの元へと辿り着いた。


「アフレコのとき以来なので、お会いするのは四か月振り、ですかね?」

「そうですね!もうそんなに時間が経つんですね!」


「毎日が過ぎていくのは本当に早いですね」と呟きながら、ひとみは風がそよぐ河川敷を歩と並んで歩いていく。


はたから見たら、俺たち二人は、恋人同士に見えるのだろうか?」と自問しながら、歩はひとみの横顔をチラリと見る。


 すると満開の桜を瞳に捕らえたひとみが「わぁ!綺麗」と感嘆の声を上げた。

 そのひとみの姿に歩は思わず息を呑む。



「……綺麗なのは桜じゃなくて、ひとみさんの方ですよ」


 その瞬間、ザァーっという強い風が吹いて、歩の言葉はその春風の中へと搔き消されてしまった。


「え?歩さん、今、何て……」


 歩の声が上手く聞き取れなかったひとみが、不思議そうな顔をして歩に尋ねる。


 すると今までに無い真剣な顔をした歩が、ひとみのその美しい瞳を見つめながら、固い声をしてこう語り掛けた。

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