♪ Take22 打ち上げをしましょう♪

 そんなせわしない編集部の中で作業する歩の元に、一本の電話が入る。


「もしもし、歩さんですか?ひとみです。お久しぶりですね!」

「あ!ひとみさん、こんにちは。お久しぶりです!」


 突然の意中の相手からの電話に歩は声を弾ませる。


「どうしたんですか?」と尋ねる歩に、ひとみは喜々としながら声を掛ける。


「これからですね。ドラマCDの成功の打ち上げをするんです。凛先生が私のことを誘ってくださったんですよ!」

「へぇ、そうなんですね。それは良かったですね!」


 電話越しでも分かる嬉しそうなひとみの話し声に、自然と歩の表情もほころんだ。


「そこで提案なんですけれど……。どうせなら四人で打ち上げをしたいという私の我儘で、急遽、歩さんと順平さんにもお声掛けをしているところなんです。順平さんは来られるとのことだったので、歩さんもご都合どうかと思いまして……」

「あ!そうなんですか!?もうすぐ定時なので、仕事が終わったら、すぐそちらに向かいますよ!」

「あぁ、良かった!ではお会い出来るのを楽しみにしていますね!」


 歩に用件を告げると、打ち上げの準備で忙しいのか、ひとみは早々に電話を切った。


 これからひとみに会えると思うと、自然と歩の心は踊る。


 そんな浮き足立つ部下に向かって「お前、邪魔だぞ」と言い、藤枝が容赦なく歩の左の足のすねを蹴り上げた。


「痛っ!藤枝編集長!暴力は止めてください!」

「窓の外の桜みたいな花を、頭に咲かせているんじゃねぇよ。この脳内お花畑お気楽野郎。……さっきの電話、牧野からか?」

「はい。何でもドラマCDの打ち上げをしないかと、丹波先生がひとみさんを誘ったらしいです」

「へぇ。丹波が牧野を誘った、ねぇ。十条お前頑張れよ」

「?」


 何やらにやにや笑って、手を振って編集部を去って行く藤枝を見て、歩は心底不思議に思うのだった。

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