♪ Take18 本当に生意気!
「陣内さん、ここは貴女の我儘を叶える場所ではないんです。皆、必死になってこの日のために準備をしてきました。ここは真剣な作品作りの現場です。だから周りの人間を掻き回すのは止めて頂きたい」
先程の明日菜のひとみへの暴言を、必死に耐えて聞いていた歩だったが、明日菜の横着な態度に、歩の我慢はもう限界だった。
「なぁに、あんた。確かあんた、少年ガーディアンの編集部の男よね?あんなしょぼい出版社の編集担当の分際で、この明日菜に意見しようっていうのぉ?」
そう言って歩を小馬鹿にして鼻で笑う明日菜の姿を、歩は必死に堪えて見つめる。
「あんた、先輩の取り巻きみたいだけど……。あんたみたいな何も持たないクズが何を言ってもここでは無駄よ」
そう言って明日菜はきつく歩を睨み付ける。
そして歩の身に着けた青いネクタイを右手に持つと、それを思い切り
「悔しいのなら何か言い返しなさいよ。このクズ。ただのサラリーマンの分際で明日菜に意見しようだなんて、一千光年早いのよ」
「富も名声も知名度も無いクズに時間を取られて、明日菜、もう帰りたいなぁ」と呟く明日菜に向かって、我慢の限界を超えた歩が明日菜の方に向き直って、こう断言した。
「確かに俺は声優としてのスキルは無い。富も名声も知名度もない、ただのしがない会社員だ。確かにここでの俺は無能だ」
「へぇ。あんた自分のことを良く分かっているじゃない」そう言って明日菜は歩のほうを向いて再度誹謗中傷をする。
明日菜の言葉を黙って聞いていた歩は意を決すると、その曇りなき
「けれど俺は君よりも人間としてクズでない自信がある。俺は決して仕事仲間を意図的に攻撃したりはしないし、何より人を傷つけるような、そんな言葉を浴びせ掛けたりは絶対にしない」
周囲の人間が思わず「うんうん」と頷くのを見た明日菜は、その様子にカッとなって声を荒らげた。
「あんた、本当に生意気!」
そう大声で叫び、歩の頬を激しく打とうと明日菜が右手を大きく振って
歩と明日菜の間に急いで割って入ったひとみが、「バチン!」とその白く柔らかな頬を激しく明日菜に
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