♪ Take15 君の頑張り
歩とひとみの間に温かいものが
「微力ながら私も手伝うぞ、牧野君」
「俺もだよ、ひとみちゃん」
「二人とも居たんですか!?」
後方にある壁に隠れて二人の様子を終始伺っていた凛と順平が、急に二人の会話に入り込んで来た。
その手には先程歩とひとみが配った水とサンドイッチが握られており、二人はそれを飲み食いしながら会話を続けた。
「最初から最後まで見物させて貰ったぞ、十条君」
「そうそう。全部見ていたぞ、歩。
「それにしてもこのサンドイッチは本当に上手いな、十条君。どこで買ったのか後で教えてくれたまえ」
「そうそう。俺も教えて欲しい」
先程、顔を真っ赤にしていた歩は、もぐもぐと口を動かしながら話す凛と順平の呑気な姿を見て、今度は激しく脱力をする。
マイペースな凛と順平の言葉と行動に、意表を突かれたひとみは、先程までとは打って変わって、晴れやかな笑顔を見せた。
「うむ。やはり牧野君は笑顔が一番似合うな」
「え?」
凛の言葉に
「せっかくここまで頑張って来たんだ。アフレコ当日まで頑張っていこうじゃないか。なぁ、ひとみちゃん!」
「そうだぞ、牧野君。君の頑張りは私たちが一番よく知っている」
「え?」
すると凛が続けて言葉を紡いだ。
「私たち三人がこの病院で、牧野君が練習をしている姿を見ているのは確かだが。私たちがここまで言うのはそれだけが理由じゃない」
「あのボロボロの台本を見たら、協力せずにはいられないよ」
そう言って順平が「うんうん」と頷く。
「そうですよ、ひとみさん。目の下に青いクマが出来るほど、ひとみさんが寝ずに練習をしていることも、俺たち皆は気が付いていますよ!」
「十条君。それは女性には禁句だぞ」
「え!?」
「歩、お前、本当に乙女心が解っていないなぁ。だからお前は抜けているんだ。まぁ、そこがお前の良いところでもあるけれどな」
すると先程から、三人の陽気なやり取りを見ていたひとみは、元気を取り戻したのか、
「はい!私、最後まで駆け抜けます!そして必ず輪久を演じきってみせます!」
そのひとみの言葉に三人はホッと胸を撫で下ろし、互いに笑顔を見せた。
こうして四人の練習はアフレコ前日、ギリギリまで続いた。
その猛特訓の練習の最中、凛は無事に病院から退院した。
そしてドラマCDの準備は着々と進み、ついにアフレコ当日を迎えるのだった。
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