♪ Take13 解っているよね?

 最後までひとみの台詞を聞き終えると、久石は無言のまま自身の顎に右手を添えた。そして少し考えると久石は少し暗い顔をしてこう言った。


「……牧野さん。輪久がそんな人間でないことは、?」

 

 ひとみの演技は上手で、何より気持ちがこもっていたと思っていた歩と順平は、久石の言葉の意味が解らず困惑した。

 ひとみに何と言葉を掛けたら良いのか解らず、歩と順平は黙り込む。


 そして久石はとどめと言わんばかりに、強烈な一言をひとみに向かって投げ付けた。


「今のままなら、ケイシーの代役をしてくれた素人の丹波先生の方がずっと良いよ。だから本番までに直しておいで」


 重々しい雰囲気の病室で沈黙をする一同が、心配をしてひとみの方を見る。


 すると自身が病室に居ると、皆が気まずい思いをしてしまうことに気付いたひとみが、一転して明るい笑顔に表情を切り替えると、すぐさま歩に声を掛けた。


「歩さん、確か四人分しかお昼ご飯用意していませんでしたよね?私、今から売店に行って、久石さんの分のお水とサンドイッチを買って来ます!」


 そう言うとにこやかな笑顔で颯爽とひとみが病室から出ていく。


 ひとみが病室を出て行った直後、驚いた歩は急いで彼女の後を追い駆けた。

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