♪ Take12 大したものだ!
「丹波先生、お久しぶりです」
「あぁ、久石君。久しぶりだな」
「そちらは元気か?」と呟く凛に対して、「元気ですよ!丹波先生も早く元気になってくださいね」と久石は軽快な声で凛に向かって話し掛けた。
突然の来客にひとみ達は一瞬驚く。
「……凛先生、こちらの方は?」
「あぁ、牧野君と内野君は初めてだったな。今回のドラマCDのプロデューサーの久石巧君だ」
「そうなのですね!これは大変失礼致しました。私は劇団スキップに所属し、声優をさせて頂いております。牧野ひとみです。こちらは私の友人で、恩人の内野順平さんです」
「ひとみちゃん、恩人は大げさだって!どうも初めまして。内野順平です」
「初めまして。牧野さん、内野君」
そのあと、チラリとひとみの顔を見た久石は、何かを思い出したのか「あ!」と突然声を上げた。
「君があの、牧野ひとみさんだね!話は聞いているよ。何でもあの頑固者の藤枝を説き伏せたそうじゃないか。大したものだ!輪久を演じるのなら、それくらいのガッツがないとね」
そう言うと久石はひとみと順平に向かって握手を求めた。
久石の言葉からひとみは先日、藤枝へと言い放った痛烈な一言を思い出して、とても恥ずかしくなった。
あの時は必死だったので無我夢中で言葉を紡いだのだが、「それを加味しても、自分は随分思い切ったことを言ったものだ」とひとみは苦笑した。
「藤枝から聞いているよ。何でも輪久役を射止めてから、連日猛練習をしているそうだね」
「藤枝さんが?」
「あぁ。あいつが珍しく褒めていたから、会うのを楽しみにしていたんだよ。良かったらその練習の成果を見せてくれないかな?」
「はい!ぜひ見て頂きたいです」
姿勢の良い背筋を益々天に向かって伸ばすと、ひとみは元気の良い声で久石に返事をした。
そして急いで台本の最初のページを開く。すると、ひとみは久石に向かって、輪久の決め台詞を唱えた。
「Put a Ring , OK ? Rink of Ring , Ready ――Fight !!」
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