♪ Take7 思わぬ来訪者

 こうして歩は仕事中ずっと藤枝にひとみの輪久役の起用を説得し、仕事以外の時間は病院で凛の漫画の手伝いをするようになる。


 慣れない作業に悪戦苦闘する歩だが、黙々と仕事と漫画に没頭する。


「丹波先生!19ページの原稿のベタが終わりました!そちらはどうですか?」

「今、最終ページのペン入れが終わったぞ、十条君。思うように作業が進まないな」

「想像もしたくないですけれど、今回の原稿、落としそうですよね……」

「そんな恐ろしい想像はしなくて良いぞ、十条君」


「悪い妄想は止めて休まず手を動かしたまえ」と凛が呟く。


 そして利き手ではない左手に点滴の管を通している凛が、「えぇい!この管が邪魔だな!」と珍しく苛立って叫んでいる姿を、歩は初めて見た。


「今回は本当にまずいぞ」と呟き、一心不乱に漫画の手伝いをする歩に、突如凛の病室を訪れた二人組が声を掛けた。


「よぉ。来たぞ、歩」

「お久しぶりです、歩さん」


 その声に驚いて、歩は急いで顔を上げる。


 するとそこには、花束と果物の詰め合わせの籠を抱えた順平とひとみが立っていた。

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