♪ Take4 何で?
「お前も本当に損な役回りだな、歩」
仕事帰りにエロゲショップ『Honey Finger』に立ち寄った歩は大学時代からの友人である
「丹波先生の後押しもあって、輪久役はほぼ、ひとみちゃんに決まっていたんだろう?それが突然、ひとみちゃんがエロゲ声優だって分かった途端に降板だもんなぁ。何かやるせないよなぁ」
箱から新商品のエロゲを取り出し陳列しながら順平は歩に話しかける。
「何でエロゲ声優ってだけであんなに酷い目に遭うんだろうな?」
「そりゃあ、やっぱりイメージってもんがあるからだろう?」
「ひとみさんにはずば抜けた演技力と表現力があるし、何より人を魅了する力がある。皆、誤解しているけれど、ひとみさんは本当に素晴らしい声優なんだよ……」
思いっきり愚痴を溢す歩に順平は「お前みたいな男ばかりじゃないってことさ」と残念そうな声を漏らす。
「で?ひとみちゃんの穴は一体誰が埋めるんだ?」
「
「マジか。陣内明日菜って超清純派で売り出している声優だろう?少年ガーディアン編集部も随分路線を変えてきたな」
商品棚を整理しながら順平は答える。
「何でもひとみさんの事務所の後輩らしい。ひとみさんの降板が決まった途端、事務所のスタッフが陣内明日菜を連れてうちに売り込みに来た。藤枝編集長は『面倒くせぇから後は全部お前が対応しろ』だと」
「うわぁ。本当に恐い世界だな。一人降板したら、そこの枠を狙って別の売り込みが来るのかよ?」
「声優業界って生き残りに皆、必死だからな」
「恐い恐い」と言いながら今度は店内ポップを飾り始める順平は、歩の表情がどんどん固くなるのを感じ取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます