♪ Take2 熱い気持ち
「君も災難だな、十条君」
歩は原稿を取りに行った先で、担当する漫画家である
「あの実直で正義感に溢れた彼女のスタンスは、私が描く輪久にピッタリだと思っていたのだが」と残念がる凛に対して「俺もそう思いますよ」と歩は力なく頷く。
「藤枝編集長も頑なだな。『18禁ゲームで活動する声優が少年漫画のドラマCDで主人公を演じるのは不適切だ』……一理あると思うが、それで才ある若い声優の芽が摘まれると思うとナンセンスだな」
手際良く原稿をチェックする凛に歩は言う。
「これで本当に良かったのか、俺には分かりません」
手を止めず黙々と作業をする凛は覇気のない歩に語りかける。
「君が分からないことは私にも分からないぞ、十条君。だがな、君はもう自分の本心に気が付いているのではないか?」
凛の言葉にピクリと反応した歩は、「あぁ、丹波先生には毎度のことながら本当に頭が下がる」とそう思いながら、自身の本音を口にした。
「俺はやっぱり、ひとみさんに輪久を演じて貰いたいです」
その言葉を聞いて作業の手を止めた凛は「うむ」と頷き、曇りなく輝く歩の瞳を真っ直ぐに見ながらこう言った。
「君の熱い気持ちはよくわかったぞ、十条君。ただその思いをぶつける相手が違うのではないだろうか?君が告白すべきなのは私ではない。あの堅物の藤枝編集長だ」
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