第14話

館が炎に包まれた日。

【藤】と【嵩雅】は一緒に死んだらしい。


私がトリップし始めた頃、【嵩雅】こと〘 凪樹〙君は産まれた。

…私が15歳の事だから、年齢差凄いな。

凪樹君は、物心付いた時には【嵩雅】の記憶があって。ずっと【藤】を探していたらしい。

ただ。

記憶があるが故に、周りからは〖変わった子〗と思われているようだった。

中学生になって、そんな周りと距離を置く様に学校へ行くことを辞め。

家ではオンラインゲームで、色々な人達と交流しているんだと話してくれた。

街に出ると、記憶故か自然と【藤】を探していたという。

そんな時に、ふらっと入った喫茶店。

それが、私の仕事先だった。


「なんか、凄いね」

それしか言葉が出てこない。

…語彙力の無さよ…。

しかし、前世ってあるんだな。

中学の時、そんなの厨二病の妄想じゃんって小馬鹿にしてすみませんでした。


「名前…」

「ん?」

「今の名前、教えて?」

…夢で聴いた声だ。

物心ついた時から聴いていた。

この声がずっと残っていて。

私は無意識に捜していた。

私の名前を呼ぶ、優しい声の持ち主。

「暁子」

「きょうこ?」

「そう、暁に子どもで〘 暁子〙」

フッと凪樹君の口元が緩む。

あ…

この微かに笑った顔は、【嵩雅】の顔だ。

「暁子さん、て呼んでいい?」

「いいよ〜。私は凪樹君て呼んで良いのかな」

パッと表情が明るくなる。



炎に包まれたあの時、朦朧とする意識の中。

交わしたたった1つの約束。

「もし、次に出逢えたら」

『その時は』


「『死んでも一緒にいよう』」

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