第12話
15年後。
「久保さん!こっちお願い!」
「はーい!承知しました!」
私は今、都内の飲食店で働いている。
【あの夢】は見なくなったし、中学時代のようにトリップする事も無くなった。
中学を無事(?)卒業した私は、高校時代にバイトして貯めたお金と祖母が貯めてくれていたお金で、実家と縁を切り上京した。
祖母は、私と母が上手くいっていないことを父に聞いていたらしい。
引っ越し費用にと、自分の年金からコツコツ貯めてくれていた。
「足しにしてちょうだい」
そう言って、笑顔で送り出してくれた。
カランカラン
「いらっしゃいませ」
扉に立つ男…の子?と目が合う。
あれ?この子、どこかで会ったかな?
既視感、と言うのだろうか。
どこかで見た気がする。
どこで会ったんだろう???
そんな事を考えている内に、上がり時間が来た。
「お疲れ様でーす」
「はーい、お疲れー!」
店を出て、(さて、帰ろ♪)と顔を上げたら。
目線の先に、夕方来店した男の子が立っていた。来店して、コーラとオムライスを頼んだ彼は。それは綺麗な所作で食べ終えると、これまたスマートにお会計をして帰って行った…と思っていた。
(なんでこんな時間に?学生…だよね?)
私服だからか、暗いからか。
ちょっと良く分からないけど。
(まぁ、私には関係ないか)
そう思って、通り過ぎようとした時。
「あの」
「ふぇ?」
あ、びっくりして変な声出た。
「…おねーさんは、この辺りに住んでます?」
「え?あ、はぁ…。この近くです」
(待ってー!何普通に返してんの?初対面だよ?)
手首あたりを掴まれて、急に聞かれたからうっかり素直に答えてしまった。
驚いた顔をして見つめていたら
「すみません、知り合いに似ていて」
気まずそうに目を逸らす。
「だ、大丈夫!!知り合いを探してるの?」
コクン、と頷く男の子。
「そっか…、大事な人なの?」
もう一度、コクンと頷く。
(友達…とか、なのかな?)
「明日、明るい内に探した方が良いかも」
もう22時だし…。学生さんが彷徨いて良い時間じゃ無いし。
「そう、ですね」
寂しそうな、切なそうな声。
「また、明日来ます」
そう言って、彼はゆっくりと宵闇に消えていった。
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