第11話
(このまま、コチラで生きていきたい)
夢の世界。
ずっと続くと思っていた。
終わりは突然で。
「藤!」
「藤!どこだ!!」
ああ、呼ばれてる。
熱い。熱いよ。
館が襲撃に遭った。
1本の火矢。
「敵襲!敵襲ーーー!」
僅かな兵が叫んだ。
ここは、【藤】が隔離されているだけの離れ。
火が回るのは、あっという間だった。
煙が目にしみる、息が苦しい
部屋から出るのは、どう考えても無理だ。
(逃げられない…!!!)
コチラの世界も、安心は無いのか。
いや、精神的に安心はあった。
【桜】と【嵩雅】がいてくれたから。
けど、それも終わる。
(あぁ、このまま館と一緒に燃えて死ぬんだ)
「藤!」
(嵩雅……?)
声が出ない。
もう喉が焼けて、息をするのも辛い。
ぼやける視界に映る影。
手を差し伸べられる。
(あ、やっぱりアレは)
(あの夢の相手は、嵩雅だったんだ)
声にならない声で『嵩雅』と呼んだ。
引き寄せられて、抱き締められたまま。
落ちてくる天井と、燃え盛る炎にのまれた。
「もっと早く伝えていたら…」
そんな声が聞こえた気がした。
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