第10話

「藤?大丈夫?」

ハッと目を開けると、【桜】が心配そうな顔で覗いていた。

「大丈夫、少しウトウトしてただけ」

「そう?それなら良いけど…」

「藤は、最近寝れてないのか?」

【嵩雅】が相変わらずの無表情で聞いてきた。

微かに眉が寄っているところを見ると、心配してくれてるんだな。

「あー、そうだね…」

(夢の中でも寝れてないとか、どんだけだよ)

「あの話のせいか?」

「?」

「嵩雅!」

(あの話?)と思ったが、桜が強めのトーンで嵩雅の名前を呼んだので口を噤んだ。

「…いや、なんでもない…」

何故目を逸らすんだ。

教えてくれよーぉ。隠し事反対!!

「さて、藤の好きな水蜜桃があるのよ」

桃?桃ですって!?

「食べたい!」

桜がニッコリ笑って、立ち上がる。

「すぐに用意するわね」

「嵩雅、あなたは剣の稽古サボっちゃだめよ」

そう言うと厨へ向かって行った。

「…俺も、稽古に行ってくる」

「ん、行ってらっしゃい」

「…戻ったら、話がある」

「…?うん、解った」

(話?話ってなんだ?しかも改まって?)

疑問符が頭を埋めたが、いたく真剣な目をしていたので何も聞かずに頷いた。

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