第30話 兄弟愛をぶっ壊してしまえ

「エクスファイア!」


アベルの手から出た炎がマルコを襲う。


「キャァアアアア!!!」

マルコは絶叫を上げて燃え尽きる。

そして、灰になった。


「アハハッ!!ざまぁみろ!クソ野郎!」


アベルは大笑いしている。


「お、おい……嘘だろ?」


バジウスは呆然としていた。


「もう1回、エクスファイア!!」


アベルの魔法は今度はアシュリーを襲った。


「いやああああああああ!!!」


悲鳴を上げながら、アシュリーは火だるまになって転げ回る。


「あははははははははっ!!!」


アベルは狂ったように笑い続けた。


「貴様、こんなことして……ただですむと思ってるのか!?プレイヤーキルは重罪だぞ!」


バジウスが怒りをあらわにする。


「ああ、分かってるさ!」


アベルは叫んだ。


「お前らは俺の家族に手を出したんだ!」


アベルは大声で狂ったように笑った。


「エクスファイア!」


三発目。

それはギリトの手にある誓約書に燃え移った。


「うわぁあ!やめろおお!」


「アベル、お前!約束が違うぞ!」

「バジウス、お前らが悪いんだよ」


アベルはニヤリと笑う。


「アベル!お前をここで殺してもいいんだぜ!」

「やってみろよ」


アベルの目が鋭くなる。


「なんだと……」

「このギルドバトルは俺らの勝ちだ!つまり、お前らの敗北だよ」

「ふざけんな!」

「さ、リザポット帰るぞ」

「う、うん」


アベルは月光隊があるギルドホールを後にした。


燃え盛るギルドホールの周りに野次馬が集まっている。


マルコとアシュリーは大やけどを負っていた。

アベルは殺さずに生かしておいた。

プレイヤーキルは重罪だからだ。


「くそぉ!」


バジウスとギリトはアベルの後を追い掛けた。


「待てええええええ!!!」


2人は必死に追い掛ける。


しかし、アベルは足が速く、追い付けなかった。

やがて、2人の視界からアベルは消えてしまった。



ギリトは悔しくて仕方がなかった。


「ちくしょう!あのガキ!」

「まあ、落ち着けよ」


バジウスは笑っていた。


「何がおかしい!」

「アベルを追い詰めたのも事実だし」

「うるせえ!」

「それにしても、アベルの奴、まさかあんなことをするなんて……」


バジウスは呟きながら、どこかへ行ってしまった。


(ちくしょー!)


ギリトは地面を蹴って暴れた。



その頃、アベルはというと……。


「お兄様」


アメリアはアベルの腕に抱き着いていた。


「アメリア、怖かったかい?」

「うん、すごく怖かった」

「ごめんよ。もっと早く助けてあげられなくて」


アベルは涙を流していた。


「でも、もう大丈夫だ。これからはずっと一緒だ」

「本当?」

「ああ、そうだとも。僕たちは幸せになろう」


アベルはアメリアを抱き締めた。


「お兄様……」


アメリアの目からも涙が流れる。


「愛してるよ。アメリア」

「私もよ。お兄様」


アメリアはアベルの唇にキスをした。


「おい、そこにいたのか?」


バジウスの声が上から降って来た。


「なっ!」

「この路地を通ったら人目に付かないし、お前らのギルドホールに近いもんな」

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