第18話 引き抜いた相手合が悪かった! 抗争の火種が勃発の予感!

ユミが今いるギルドを抜けるため、一旦、月光隊のギルド部屋を去った。

その数分後だった……

招かれざる客が現れたのは。


「我がギルド『バタフライエフェクト』も人材不足なんですよ。お互い分かるでしょ?」


眼鏡の男、『バタフライエフェクト』のギルドマスターであるアベルは優しげに言う。

だが、レンズの下の目は真剣そのものだ。

彼の隣居るのはユミ。


「しかし……」


ギリトは反論しようとする。


「もういいでしょ? これ以上揉めたら、どうなるか分かってますよね?」


アベルは笑顔で、だが、凄みのある声で言った。

『バタフライエフェクト』のギルドメンバーは10人。

全員がレベル20以上だ。

『月光隊』では勝ち目がない。


「ちっ……」


ギリトはうつむいた。

こんなことだから、引き抜きは嫌だった。

それを強く奨めたのは、彼の隣にいるバジウスだ。


「何を言ってるんだ? 元々はそっちのユミから……」


バジウスはギルド斡旋所でユミと出会った時のことを話した。


「で、ユミは俺たちのギルドに入ると言ってくれたんだ!」

「何言ってんのよ! そっちが強引に誘って来たんじゃない!」


ユミがバジウスに向かって声を荒げた。


「なんだと!? お前がうちに入りたいって言うから、連れて来たんじゃねぇか!」

「私はは本当はやめる気は無かったんだよ! あんたらが上手い話を言うからちょっと乗り気になっただけだよ!」


ユミは舌を出し、中指を立てた。


「なんだと!?」


二人の口論がヒートアップする。


「おい、お前たち! 喧嘩すんじゃねぇ!」


と、ギリトが止めようとする。


「うるいわね! この野郎!」


ユミがギリトを睨みつける。


「ああ? やんのか? こらぁあ!!」


バジウスもユミを威嚇する。


「おめえら!!」


今度はアベルが怒鳴った。


「いい加減にしろ!! バジウスもユミも冷静になれ!!」


二人は黙った。


「ギリトさん、バジウスさん。これはギルド間の致命的なトラブルですよ」

「ああ。だが、ユミからこちらに仕掛けて来たことは間違いないし、ユミだって一度はこちらの誘いを受けた。双方合意の上だった」

「しつこいですね」

「ユミが抜けた分の埋め合わせはするつもりだ」

「へえ」

「だから、少し時間をくれ」

「それは、出来ない相談です」

「どうしてだ!」

「このことで怒ってるんですよ。うちのバックについてる『刺殺倶楽部』が……」

「……え?」


ギリトの声が震えた。


『刺殺倶楽部』ーー


超巨大ギルド。

王族との繋がりも強く、世界4大ギルドに数えられる。


アベルがゆっくり口を開く。


「ユミは、そこのギルマスの妹なんですよ。うちで預かる様に言われてるんです」

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