第9ワン【からかいあいてがやってきた!】

 場所・自宅


 ブン太、匂いで気付き玄関前に駆けつけ待機


 SE・玄関ドアの鍵穴に鍵が刺さる音→サムターンが解除される音→玄関ドアが開く音


 ブン太、相手を見た瞬間にそれまで振っていた尻尾がぴたと止まり、虚無の顔に


「――ブン太氏久しぶり~! 元気にしてた~! あなたの大好きな舞菜香まなかちゃんが、遠路遥々北海道の地から駆けつけて参りました! ......って、何その「なんだお前か」って反応。相変わらず私には塩対応だな。いいのかい? ブン太氏が大好きな北海道限定、北海道産エゾシカのあばら骨、3パック4980円(税込)を持ってきてあげたというのに」


 ブン太、エゾシカの言葉に反応して一応尻尾だけは振る


「このツンデレめ。素直じゃないんだから。お前さんがわざとやってるのを知らない舞菜香さんだと思ったか」


 舞菜香、靴を脱いで部屋の中にあがり、ブン太の頭をわしゃわしゃと撫でる


「へぇ~、結構綺麗に片付いてるじゃん。お姉ちゃん実家ではだらしない生活送ってたのに、一人暮らし始めたら変わるもんだね。あ、一人じゃなくて一人と一匹暮らしか」


 舞菜香、リビングの床に荷物を置き、室内を徘徊・物色


 ブン太、舞菜香の後ろをついて回る



「......男の痕跡が欠片かけらもない。てことはお姉ちゃんはまだ処女と判断してOKですかな、ブン太氏?」


 ブン太、舞菜香の問いに「来て早々なに言ってんだコイツは」と呆れ顔


「だってお姉ちゃん美人だし、声もその辺の量産型女性声優どもと違って唯一無二にして天性の透き通ったボイスを持ってるし。妹としては、身内が業界に住まう陰獣どもに食べられてないか心配なわけよ。でもこの感じなら大丈夫そうだね。男の陰〇(P音)一つ落ちない」


 舞菜香、鼻息荒く満足気な表情でリビングの真ん中で仁王立ち


「お姉ちゃん、昔から人間より動物の方に愛情を向けるんだよね。だからブン太を同伴させて正解だった」


 舞菜香、荷物からエゾシカのあばら骨を取り出し、封を開けて一本取り出す

 そして表彰するようにブン太の前でエゾシカのあばら骨を両手で持つ


「よってブン太氏、あなたの功績を認め......って、おい! まだ人が祝辞言っている途中

でしょうが!?」


 ブン太、即行でエゾシカのあばら骨を奪い取り、リビングの隅に座ってしゃぶりつく


「まったくこれだから犬畜生は......いえ、何でもないです。さーせんでした」


 ブン太、悪口を言われた気がして低く唸り声をあげて威嚇。舞菜香、たじろぐ


「今後もブン太がいればお姉ちゃんに変な蟲が付くことはなさそうだね。頼りにしてるぞ、ボディガードく――おおぅッ!?」


 ブン太、食事中に頭をわしゃわしゃされるのが嫌で、「ガウッ!」と舞菜香を威嚇


「......そういえばブン太氏、食事中に頭を触られるの嫌だったね。これは失礼、すっかり忘れてた。今日から一週間お世話になるけど、お手柔らかに頼むよ」


 ブン太、「分かればいいんだよ」と言いたげな犬語で喋り。またエゾシカのあばら骨にしゃぶりつく


          ◇

 次回、第10ワン(終)は9月12日(木)の午前6時01分に投稿予定です。

 最後まで宜しくお願い致しますm(_ _)m

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