第3ワン【はじめての、おーでぃしょん】

 場所・自宅リビング


「......よし。メイクもバッチリ。身だしなみも完璧。笑顔も......OK。ついにこの時が来たんだ.......」

「ブン太おいで〜。(ブン太、撫でられる).......私、これから初めてのアニメのオーディションに行ってくるね。私が中学生の頃にハマってた漫画が原作なんだけどさ、まさかこのタイミングでアニメ化されるなんてね。これも何かの運命かも」


 ブン太、ウィークポイントのひとつである口の下を掻いてもらい、気持ち良さそうな顔になる。


「分かってるよ。声優の世界は100回オーディション受けても1度も受からないなんてそう珍しくないっていうし、最初から上手く行くなんて思ってない。でも気持ちで負けたら終わりだから、悔いのないように全力で挑んでくるね」


 ブン太、もっと掻けと手で催促。

 彼女、期待に応える。


「も〜う、ブン太はわがままなんだから。昨日事前に現地まで行ってチェックしといて良かった。じゃなかったら私、今頃ブン太とこうしてじゃれてる暇なんてなかったよ」


 ブン太、お腹のほうも掻いてやると転がりだす。


「掻い掻いおしまい。これ以上やるとコロコロしないといけなくなるから、私そろそろ行くね。夕方までには帰って来られると思うから。そしたらお友達のぽんちゃん家まで散歩に行こうね。(SE・玄関の扉が開く音)じゃあブン太、行ってきます。いい子にしてるんだよ」


 SE・玄関の扉が閉まる音

 

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