アイドル候補生を探す命令が……

課長のメガネのおじさんが

 「このプロジェクトへの募集者はどれぐらい集まったか?」


と、聞いてきているが、少子化の影響でほとんどいないことを告げた。


「高校は一つしかない訳だ。中学なら平成の合併の頃の自治体五つに各一つずつある訳で五校ある訳だろう。全部、南徳中学の分校でしかないがな。高校だけではなく、中学でも集めてきたらいいんじゃないか?」


 なるほど、その考えは頭になかった。早速、各中学と連携して、募集することになった。


「もう第三学年は卒業のシーズンだ。しかし、別に中三生でもかまわないからな。」


とフォローされた。


 いわゆる中高一貫校のような形に近い。しかし、中高一貫校と言っても緩やかな羈縻的なもので、そこまでは中高一貫校という訳でもない。しかし、教師は中高一貫で同じ者が担当している。


企画では、各中学校のあった自治体名からすでに源氏名は決まっている。リーダーはアナンちゃん。他四人はそれぞれナカちゃん、ミナミちゃん、ムギちゃん、ミハルちゃんということになっている。ミハルちゃんは男の娘という設定が企画段階から決まっている。


LGBTQに配慮した街づくりをしないといけない雰囲気に最近は地方でもなってきている。あとは、それっぽい娘を見つけてくるのが至難の業である。なにせただでさえ、総人口自体が減っているのに、子どもの存在自体レアキャラのようなものである。市で見渡しても歩いている人を見つけること自体困難になっているのに、そこから子どもを見つけようとすることは、バナナを剥いて、種を見つけ出そうとするぐらい困難だ。


 課長に言われて、南徳中学校の本校と四つの分校の合計五つの学校でオーディションを開催することとなった。学校には圧力をかけることに成功し、わざわざ日曜日に生徒たちを強制的に集めることとなっている。


学校というのは、いつの時代もまるで軍隊のように秩序正しい存在である。

AIロボットが人よりも闊歩する時代に、なぜ現地で集まるのかは、正直、理解に苦しむが、俺が決めたことではない。


AIとそこのアナログ教師が決めたことだ。だから俺に責任はないのである。俺は俺に任された任務を遂行するのみである。

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