第3話 ~ギルド加入~

 受付嬢に連れられ、豪華な部屋に入れられた。

 広い部屋の中心には円卓。上座の部分に一人、見るからに質の良さそうな服を着た男がいる。

「ギルドマスターのジェンだ。よろしく頼む。」

 なんとなく察していたが、この人がギルドマスターか。

「ルイドです。」

「ああ、堅苦しいのはいい。君の戦歴は見させてもらったよ。数十分でゴブリン578匹を討伐。はっきり言って狂っている。どのような手を使ったか知らないが、その力は隠しておいたほうが良い。ギルド登録は許可するよ。あと、ゴブリン討伐分の報酬がこれだ。」

「oh……。」

 袋いっぱいの金貨だった。

「これのお金って、どのくらいすごいんですか?」

「君はこの国の人間ではないのかい?」

 少し怪しむような言い方をされた。

「いえ……。お金のことはすべて姉に任していましたので……。」

 咄嗟のウソ。

「そうか……。10ヶ月は仕事しないでも生活できるような額だ。」

「Oh……。」

 俺はコミュ障だ。口癖は、"Oh……”。それにしても、恐ろしい額だ。日本円で例えると350万円ぐらいだろうか...

「まぁ。そんなことはどうでもいい。君、スキルは何だい?魔力0の君がどうやってこの数のゴブリンを蹂躙したんだ?」

 ギルドマスターは、強い口調で話しかけてきた。

「背中のそれが答えなのか?」

 俺の背に掛けてあるRPKを指さして言った。

「まぁ、そんなところです。」

「君がどのようなスキルを持っているのか、どんな人生を歩んできて、どんな人生を歩みたいのか、私は知らないし、口出しする気もない。だが、それは隠しておいた方が無難だぞ。」

 ギルドマスターは、突然優しい口調で言った。

「これがギルド証。北のエイジャ、遠く東にあるニホンを除き、我々人類が認識しているすべての国で使える。持っておきなさい。」

「はぁ……。」

 今、ニホンと言っていたよな?いや、ニホンってニホンだよな?

「じゃあ、早く家に帰りなさい。もう夜も遅いぞ。」

 ギルドマスターは、カーテンを開けて外を見ながら言った。

「そうですね。失礼します。」

 ギルド証を貰った。ギルド仕組みとか、他の国のこととか、色々教えてもらって、あっという間に時間が過ぎた。すっかり夜。星空が綺麗。


「帰ったぞ。」

 家に帰った。ボロっちい家だが、町から近く立地がいい。人通りも多いので、うるさいが治安もいい。やはり私とアルは何者なのだろう。

「おかえりー。今日遅かったけどなんかあった?」

「なんというか、まぁ、お金稼いできたよ!」

 いただいた金貨の半分をアルに渡した。

「うぅ……あぁ……うぅ……。」

 泣き始めてしまった。

「どうした?」

「なんでこんなことするの...なんで...」

「いや、そういうことはしてないから!」

 おそらく、犯罪に手を染めたと勘違いされたのだろう。


 事情を説明した。” 危ないから冒険者なんかやめて” と言ってきたが、俺は頑なにやると言っていたら、アルが折れた。




 そういえば、俺のスキルレベルは上がったのだろうか。とりあえず、今よりも大きい銃を出すことにしよう。"対物ライフル"だ。

 対物ライフルというのは、俺がこの前使ったRPKよりも大きな口径の弾を打ち出す狙撃銃だ。この前俺が使ったマシンガンの弾の口径が7.62mmなのに対し、今から出すのは12.7mmの弾を撃ち出すことができる。どれだけ攻撃力があるかがわかるだろう。現世では、対物ライフルを使って2km以上先の敵を狙撃した記録も残っている。射程が長く、威力も高い最高の銃だ。

 M82A1。米軍も採用するポピュラーな対物ライフル。バレット社が開発したものだ。

 特にキラキラとしたものが出てくるわけでもなく、突然目の前に憧れのM82A1が出てくる。

「Oh……。」

 持ってみると、RPKよりも重たい。というか、死ぬほど重い。

「最高だ。あぁ……。」

 声に出てしまう。でも抑える必要はない。自分の世界。自分だけの世界だ。

 M82A1を見た人は、一人残らずこの銃の虜になる。

 特に、このピストルグリップを見てほしい。マットブラックの美しい形状。早く撃ちたい。だが、大きな銃だと、極至近距離で接敵したときに厄介だ。そうだな……。M82と同時に携行できる小型な武器……。

「ピストルだ。」

 そうだ。ピストルだ。どうする、赤星がほしい。だが、前世の俺を殺した武器。赤星は俺を殺した武器……。最高にかっこいいが、なんだか気が引けてくる……。

「これしかないな。」

 俺はすぐに新たな武器を召喚した。ピストルは小さいからそこまで疲れない。

 Glock18。9mmパラベウム弾という種類の銃弾を使うこの銃は、セミオート射撃とフルオート射撃の2種類が選択できる。セミオート射撃は、よくあるヤツ。そして、フルオート射撃は、マシンガンのように弾を連射することができる。まぁ、反動制御が難しいのは言うまでもないが……。

 それに、この銃の使う9mmパラベウム弾は西側の銃に広く使われている弾だから、一気に召喚しておいておけば管理も楽。今すぐ撃ちたい。明日はギルドへ行こう。依頼を探そう。そして、狙撃をするんだ。

 ゆっくりと布団に入り、静かに眠りに落ちた。




 ギルドへ来た。M82A1とGlock18を持って。Glockはレッグホルスターに入れている。ライフルを持って歩くのは、軍隊のようで非常に楽しい。依頼を探し回っていると、一つ面白そうなものを見つけた。

 "一つ目オーガの討伐"だ。だが、必須冒険者ランクがA。自分のランクはDだから、当然受けられない。そこで、ギルドマスターを呼んだ。

「マスター。私のランクをAにしていただけないでしょうか?」

「何を言っているんだい。そんなことできるわけないじゃないか。」

「何か欲しいものはありませんか?」

 俺の作戦はこうだ。ほしいものを聞き出し、そのものを召喚する。それをマスターあげることで冒険者ランクを上げてもらうのだ!

「なぜそのようなことを聞くんだい?」

 ギロッとした目でこちらを見てくる。

「どうしても受けたい依頼があるんです。」

「ほぉ。どの依頼だ?」

「"一つ目オーガの討伐"です。」

「それは面白い。だが、勝算はあるのかい?」

 少し怪しんでいるようだ。だが、はっきりと言う。

「あります。確実に勝てます。」

 確実に勝てる。自信をもって言う。

「私が一緒に行こう。私のランクはAだ。パーティーを組めば合法的に依頼を受けることができる。」

「では、お願いします!」

 依頼受注成功!

 これでM82A1を撃ち、レベル上げもできるぞ!

「でも質問をさせてくれ。君は最初ソロでこの依頼を受けようとしていたということなんだな?」

「はい。」

「パーティーは組んでやる。だが、そのソロで確実に勝つ作戦を教えてくれ。君は魔法が使えないのだぞ。」

「特殊な武器を使います。心配しないでください。必ず勝てますから。」

「その特殊な武器というのは、君が背中にかけている物かね?君の噂なら聞いている。遠距離から魔力切れも起こさずゴブリンを殺し続けたと。」

「耳に入っていましたか……。では、外に行きましょう。使っている様子を見せますよ。」

 私とギルドマスター、マスターの秘書の3人で訓練場へと向かった。

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