第6話:血塗られた逃避行

 私達は命からがら王城から逃げ出す事ができました。

 ですがやはり国王も私を陥れる陰謀に加わっていたのでしょう。

 王太子の護衛騎士や側近だけでなく、他の騎士や兵士が襲ってきました。


 遠方から矢を射掛けようとする者は私が焼き殺しました。

 不意を突いて陰から襲い掛かる者はダニエラが斬り殺してくれました。

 屍山血河を作って王城から逃げ出しました。


「もう少し先に小川があります、そこまで我慢してください」


 口にしていませんでしたが、激しい乾きが表情に表れていたのでしょう。

 ダニエラが水の飲める場所を教えてくれました。

 ですが、この状態でお腹を壊すわけにはいきません。


「生水を飲むのは止めた方が良いわ、何とかお金を手に入れて、村人からエールかワインを買わないと」


「それくらいのお金なら持っていますが、村人に売られるかもしれません」


「売られたら売られた時よ」


「……村人に毒を盛られるかもしれません」


「そのような者がいるのですか?!」


「パトリツィア様のコートネイ公爵領とは違います。

 王家直轄領や王国領では、人を陥れるくらいでないと生き延びられないのです」


「民の生活が苦しいとは聞いていましたが、そこまで酷い状況だったのですね……」


 私も耳にしていましたが、父上の配下が調べた書類で確認もしていましたが、実際に肌身で感じるのとは違うのですね。


「実際に見て話し確かめたいのですが、難しいですか?」


「少しでも危険だと感じたら、躊躇うことなく民を殺せますか?

 殺せる覚悟があるのでしたら、村人からエールを買えます」


「一瞬でも行動が遅れたら、恥辱にまみれた死を選ばなければいけないのですね」


「はい、パトリツィア様が自害できない場合は、私が剣を振るわなければいけなくなりますが、やりたくないです」


「分かりました、ダニエラにそのような事はさせません」


 ……哀しい事ですが、ダニエラの言う通りでした。


 ダニエラが完全武装しているというのに、女二人と見て襲ってくる者が何人もいたのです。


 ダニエラが注意してくれていたように、毒や眠り薬を盛って私達を手に入れようとっする、陰湿な者達がいました。

 情けない事に、男だけでなく、女にまでそんな者がいました。


 ダニエラに私を殺させるような、非道を行わせるほど卑怯者ではありません。

 自分が平民を殺したくないからといって、ダニエラに私を殺させるなんて、恥知らずにも程があります。


 だから、心を鬼にして、他人には見えない涙を流して平民を殺しました。

 私達を騙そうとした者たちは、青い炎に焼かれて死んでいきました。

 そのような生き地獄を通り抜けて、コートネイ公爵領に戻れました。

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