第5話:闇に謳う復讐・焼き尽くされる王太子たち

 構わない、人でなくなっても構わない!

 でも、その代わり、ダニエラを助けて、王太子達を殺して!


(我に頼るな、そのような弱い心だから塵屑に負けるのだ。

 全てを跳ね除ける強い心を持て、怒りを力に変えよ。

 今のお前には可能だぞ、まずはダニエラというモノを助けてみよ。

 毒を打ち消す力を願い、身体を癒す力を願ってみよ)


「悪魔よ、魔王よ、ダニエラを助ける力を与えたまえ、解毒、治癒!」


 私は、誠心誠意願いました。

 王太子達への憎しみを、何もせず見物するモノたちへの憎しみを。

 ズキズキと痛む顔、眼の痛みを力に変えようと。


 何よりも、焼けつくような、切り裂かれるような、締め付けられるような心の痛みを、全てダニエラを救う力に変えようと祈りました。


「「「「「ウォォォォォ」」」」」


 悪魔、魔王の力とはとても思えない、金色に光り輝き力が、地に伏しているダニエラを包んでいます。


 何の知識のない無知蒙昧のモノたちでも、奇跡の力がダニエラを救おうとしているのが分かるのでしょう。


 さっきまで勝利者の余裕で醜い嘲笑を浮かべていた王太子達が、顔面蒼白となり、半ば口を開けた馬鹿顔で硬直しています。


 もうダニエラは大丈夫と確信した私は、怒りを王太子達に向けることにしました。


「悪魔よ魔王よ、悪逆非道な王太子達を焼き尽くす力を与えたまえ、地獄の業火!」


 私の言葉とともに、王太子、ラヴィーニア、異端審問官、側近貴族達が青い炎に包まれ、身体を焼かれる激痛にのたうち回っています。

 私は止めを刺そうとしたのですが……


「パトリツィア様、お待ちください!

 パトリツィア様が手を穢す事はありません、止めは私が刺します」


 まだ体が本調子でないのか、先ほどのような素早さや鮮やかさがないダニエラが、それでも精一杯の速さで近づいてきてくれました。

 そして王太子、ラヴィーニア、異端審問官たちと止めを刺してくれます。


「パトリツィア様、まだこの城には敵が沢山おります。

 腹立たしい事ですが、これほどの事を国王陛下に知られずに行う事はできません。

 恐らくですが、国王陛下も加担されています」


「分かっています、血路を開いて逃げなければいけないでしょう」


「私の後について来て下さい」


「慌てないで、まだ大丈夫よ」


「ですがパトリツィア様」


「王太子の一味は、王太子が私を痛めつけるのを楽しんでいると思っているわ。

 少々時間がかかっても疑問に思わないわ。

 しっかりと休んで、十分戦えるようにしなければ、生きて城から逃れられないわ」


「分かりました、十分休んで必ずパトリツィア様を逃がして見せます!」

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