第5話 衝撃!! 禁じられた言葉!

「……そういえば、ポメラニアンとアビシニアンはどうした?」


 歩きながらラヴィーさんは訊ねました。確かにティルさんとティオさんはいつの間にか姿を消してしまっています。さんたちとの、高度なコミュニケーションが退屈だったようです。


「お腹が空けば帰ってくるでしょう」


「ホントに犬か猫だな!」


 そんな事を言っている間に、人間の村に着きました。このでは、この地方にあるにしてはかなり大きな村です。もう町と言っても良いかも知れません。


 村の周囲には濠が掘られ、水が張られています。村の入り口は跳ね橋だけですが、橋はあげられているので入る事は出来ません。


 濠もかなり広く深いので飛び越せそうには無いです。


 跳ね橋の向こうには警備兵らしき中年男性がいました。一応、兜と鎧を着け、手には槍、そして弓矢も装備してますが、あまり大層なものではありません。どうやら村は平和なようで、警備兵も余り部外者を警戒していないようです。


 警備兵は濠の向こうから声を掛けてきました。


「よぉ、変わった格好のお嬢ちゃんたちだな。旅人か?」


 警備兵は変わった格好と言いますが、ティセ子さんとラヴィーさんは普段着です。この世界の人たちには変わった格好に見えるのでしょう。


 しかしそれよりもティセ子さんには気になった事がありました。


「日本語」


 ……!!


「それ禁句な!」


 空気が読める美少女ラヴィーさんはそう言ってティセ子さんをたしなめます。


 ティセ子さんもうんうんと何度も肯いて答えました。


「分かりました。なぜ日本語が通じるのかは、気にしない事にします」


 そうです。気にしてはいけません。それですべてが平和になるのです。


 よしよしと肯くと、ラヴィーさんは警備兵の方へ改めて声を掛けます。


「ちょっと用事があって来た。村の代表か責任者に会わせてくれ!」


 しかし見慣れない女の子たちが来て、いきなり責任者に会わせてくれと言っても取り合ってくれるはずがありません。


「う~~ん、そんな事を言われてもなあ。そもそも何の用事だい?」


 そう訊ねる警備兵に、ティセ子さんは例によって身を乗り出すようにして説明しました。


「実はというわけで……」


 それを聞いた途端、警備兵は飛び上がります。


「なんと! そういう事情か! ちょうど良い。村長たちは、いま村の中央の広場で定例会議の真っ最中のはずだ。今すぐ掛け合ってみてくれ!」


 そう言うと跳ね橋を下ろし始めました。


「便利ですね。


「便利すぎるだろう! なんでそれで通じる!!」


「不思議ですね」


 ティセ子さんも首を傾げました。


 しかし通じてしまったのだから仕方有りません。ティセ子さんとラヴィーさんは下ろされた橋を渡り村に入りました。


 日中だと言うのに村は結構賑わっています。商店も多くあります。色々な飲食店もあります(これは伏線なので覚えておくと良いです)。


 警備兵の言う通り、広場は村の中央にありました。広場には大きな泉が湧いています。どうやらこの村は、この泉を中心に発達したようです。濠には使い切れなくなって余った水を流しているのでしょう。


 広場の中央には大きな円卓が出されて、大人たちが難しそうな顔でなにやら会議をしています。


「どうやら今は会議中のようだ。話は後でも……」


 ラヴィーさんはそう言いますが、我らがティセ子さんは空気なんか読みません。とてとてと円卓に歩み寄りました。


「村長さんはどなたですか?」


 ひげを生やした年長の男性が答えます。


「私が村長だ」


 隣にいる年配の男性も答えます。


「私は副村長だ」


 そのまた隣にいる年配の女性も答えます。


「私は議長です」


 そのまた隣にいる……以下略。とにかく一通り村の偉い人が揃っているようです。ティセ子さんは偉い人たちに説明します。


「じつはで」


「なんと、そういう事だったのか!」


 今回もで通じたようです。凄いですね。


「北の村はずれで、コボルトに脅されている事例が多発していましたがそういう事情があるとは……!」


 村の人たちはラヴィーさんと同じく、さんたちをコボルトと呼んでいるようです。

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