第8話 決戦前夜③
提案したのは湊で夏樹は強く頷いた。
「ま、無理だったんだけどね。」
話し合いが終わると、夏樹はその場に立ちあがり鼻から息を思い切り吸った。
そして『逃げねぇからてめーらから来い!』と叫んだ。
廊下の奥まで簡単に届く声量だった。
「そしたら化物が教室から出てきたり、階段から登って着たりで本当に大変で・・・。マジでこいつ見捨てて一人でやろうとおも・・・いやもうこいつの愚痴はやめとくわ。止まんなくなるから。」
結構しっかり夏樹に対してイラついてるのな。
苦笑いする翔とは逆に、言われ放題の夏樹は嬉し気に『あの時は大変だったなー』と呑気に笑っていた。
「だから翔君と真奈美さんに会うまでずっと化物と戦ってたわけ。それで化物について色々わかったの。主に三つだけどね。」
『そんななくね?二個くらいだろ。』という夏樹の発言を無視し湊は続ける。
一つ目は化物が不死身である事。
傷を負っても何事も無かったかのように再生し立ち上がる。
二つ目は突然消えたり、突然現れるワープの様な力を扱えること。
「ここまでは知ってそうだから、根拠は省くけど説明いる?」
翔と真奈美は首を横に振った。
保健室前で化物の膝にひびを入れても即座に立つのを見た。
足音も無く現れ、誰も居ない教室で突然現れてみせた。
二人は既に体験していたので彼女の発言を疑う事はしなかった。
「じゃあ三つ目行くけどさ、まず質問。あいつらやけに私達が行く先々に現れなかった?何でだと思う?」
「それはワープ能力を持っているからじゃないの?」
翔が答える。
「それだけじゃできないのよ。私達の位置把握はどうやってるの?ワープできるから私達の居場所にピンポイントで移動できるとはならないのよ。」
「そう?ワープの性能が『どこでもドア』と同じ位なら一緒の意味だと思うけど。」
「化物のはそんな万能な力じゃないと思う。こっから私も仮説なんだけど、この学校の全てを把握して、化物を駒みたいに移動させてる奴が居るんじゃないかって思ってる。つまり化物がワープの力を扱える訳じゃない。」
「あいつらワープ使わないで走って追いかけて来るからな。」
夏樹の発言で翔も、真奈美も思わず納得してしまう。そこで翔の中に疑問が生じる。
もしそれが本当なら、化物はどうやって俺達の場所を把握してるのだろうか。
「学校中にある視線ね。それで場所を把握してる。」
真奈美が翔の心を読んだかのようにピンポイントな発言をする。
「多分ね。最初は化物達の視線だと思ってたんだけど、これは違うと思う。あいつらには不意打ちが効くから。」
湊の発言を聞き翔は、さっき廊下の角で待ち伏せて、化物に足をかけて転ばせたのを思い出した。
「とりあえず、情報は出そろったかな。話をまとめると私達がするのは、『学校中にある監視の目をかいくぐって、この三階のトイレから二階の三年三組まで行く。』って事ね。」
真奈美が続ける。
「一応聞いておくけど確定しない情報だけで皆を動かそうとしてる。不満は無いの?もし死に物狂いで三年三組まで行って誰も居なかったらその・・・。」
真奈美が言葉を選んでいるのを待たず、翔が立ち上がった。
「その場合は保健室かトイレに駆け込こんでもう一度考えよう。答えが無いんだから試行錯誤するしかないよ。」
「早く暴れさせてくれ。」
翔と夏樹の反応を見て少しリラックスした様で、真奈美は静かに『そうね。』と言いながら笑った。
「わかった。それじゃあ今入った情報を基に作戦を考えたから・・・行くよ。」
話し終わったのち、四人はトイレの入り口に集まり、そのうちの一人が廊下に向かって駆けだした。
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