第37話 踏んだり蹴ったり

 家に帰ると泥だらけの私をお姉ちゃんが心配してくれた。


憂希美ゆきみ⁉︎どうしたのよその傷!」

「うっ…お姉ぢゃん…」

「誰にやられたの?私がそいつ引っ叩いて…」

「私ね、頑張ったんだけど、ダメかもしれない、依岡よりおかくん、もう会えないかもしれない」

「何言ってるの。憂希美が彼にしたことは、彼にとって確実に助けになってるよ。大丈夫」

「でも依岡ぐん全然学校こないじ…会いに行ったら、迷惑かけぢゃうし…」

「そんなことないよ。今そう思っちゃうのは仕方ないけど、一回落ち着こう?今日はなんも考えないで美味しいご飯食べて、あったかいお風呂入って、気持ちいい布団で寝よう?」

「うぅぅ………」

「憂希美はよーく頑張った。偉いぞー」


 そう言ってお姉ちゃんは私を抱きしめて、頭を撫でてくれる。

 やっぱり私はまだ、一人じゃ何も出来ない。


 ………あれ?


「ない⁉︎」

「え、ど、どうしたの」

「お姉ちゃんにもらったシュシュ!ない⁉︎」

「あちゃー。多分争った時に落ちたんだろうね」


 お姉ちゃんがせっかくくれたのに…私は何をやってもダメダメだ…。


「憂希美!泣かない!」

「えぐっ………だってぇ………」

「シュシュなんていーの。今度は新しいの買ってあげるから。なんでもかんでも気にしてたらキリないよ」

「………うん。でも、ごめん…」


 お姉ちゃんに散々迷惑をかけまくったけど、何度もお姉ちゃんは気にしないでって言ってくれた。

 今日はもう考え事はしないでおこう。

 でもこんな夜には、やっぱり、考えてしまう。

 依岡くん………。

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