第36話 負けそう…

 翌日、学校の帰り道。

 依岡よりおかくんの家の玄関に来ている。


「よーりおーかくん」


 依岡くん家のひびきさんとはかなり顔を合わせていて、自然と仲良くなっていた。


「お、栗色の嬢ちゃん。ちょっと待ってな」

「ありがとうございます」


 響さんが依岡くんを呼びに行っていると、間が悪く後ろから夏帆なつほさんがやってきた。


「ねえあなた」

「…!夏帆さん…」

「なんのつもり?私の珠央たまおに」

「何って…友達として会いに来てるんです」

「彼女がいる男に媚び売るなんて高校生のくせに最低のビッチね。帰んなさい」

「嫌です」


 腹を立てた夏帆さんは私の頬を叩いた。

 

「アンタ詰められたいの?私たちが何の集まりか知ってるの?」

「知ってますよ。でも関係ないですよね?私は依岡くんと話に来てるだけですから」

「生意気よアンタ。珠央が来る前に失せなさい」

「嫌です」


 また、叩いた。痛い。


「いい加減にしなさい!私の珠央を取らないで!」


 そう言って私たちは取っ組み合いの喧嘩になる。


「私の私のって!依岡くんの気持ち考えたことあるんですか⁉︎依岡くん全然楽しそうじゃない!夏帆さんが依岡くんを追い詰めてるんじゃないですか⁉︎」

「うるさいわね!アンタに何がわかんのよ!珠央と私は約束された関係なの!ただのクラスメイトにはわからないわ!」


 そのタイミングで依岡くんが現れる。


「…!おい何やって…⁉︎」

「アンタの存在が邪魔なのよ!消えなさい!」

「きゃあッ!」

「ッ!白澤!大丈夫か⁉︎」

「依岡くん…」

「ねえ珠央。なんなのその子。ここのところずーっと珠央の家に来てるみたいだけど」

「白澤はクラスメイトだ。話してるだけだろ」

「珠央まで…!いい加減にして!異常よ!私たちは結婚するの!他の女が首を突っ込まないで!」


 夏帆さんの怒鳴り声を聞いていると頭が痛くなってくる。

 それに、このままいたら依岡くんの迷惑になってしまう…。


「………依岡くん、もう帰るね」

「おい白澤…っ」

「ふん。さっさと消えなさい」


 辛い。

 夏帆さんにあんなに言われて、辛い。

 依岡くんに会いたいのに、もう依岡くんの家に行くのは厳しい。


「依岡くん………ごめん………」



「じゃ珠央。私も帰るわ」

「……」

「また明日、くらい言ってくれてもいいじゃない」

「……」

「そ。じゃあね」

「………白澤。……ん?これ…」


 珠央は足元に何かを見つけた。


「このシュシュ…」

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