第34話 諦めないんだから

「…そもそもお二人はどうしてそんなに詳しいん、ですか?」

「俺もヤクザの息子だから?」

「へぇ〜………えっ⁉︎」

「なんちゃって」

「はぁ」


 こんな時に冗談やめて。


珠央たまおとは中学ん時一緒に遊んでたからよ。色々聞いたんだ。組のことも夏帆なつほさんのことも」

「そうなんですね…」


 事情はわかったけど、どうしようもできない。

 私が夏帆さんを止めたところで、きっと、事がもっと大きくなってしまいそう。

 何もできないとわかったら、また、涙が…。


真慧まこと!お前いい加減にしろよ!白澤しらさわさんコイツの言うこと真に受けなくていいから!俺らでたまちゃん助けてやろ!な!」

「違うの…私、依岡よりおかくんのこと何も知らなくて…依岡くんはたくさん悩んでるのに、私は能天気に一緒にいたりして…依岡くんに何もしてあげられなくて…っ」


 そう、自分の無力さに涙が出る。


 真慧くんは私の見解を否定するようにアドバイスをくれた。


憂希美ゆきみちゃん、それは違うよ」

「え…?」

「珠央には"日常"が足りないんだ。だから、一緒にいてあげる、それが一番いいんだよ」

「…?日常が…?」

「アイツはきな臭い非日常に疲れてる。だから学校で、クラスメートと一緒にいれるこの普通の時間がすごく楽しいはずなんだ」

「でも、もうあの二人は…」

「夏帆さんと付き合うことを選んだのは、憂希美ちゃんを巻き込みたくなかったからだと思うよ」

「…………」


 そうなったら、私が今できること、は…。


「…私、依岡くんと一緒にいる!」

「白澤さん…」

「巻き込まれたなんて思ってない。私は好きで依岡くんと一緒にいる!ヤクザとか関係ない!」

「いやー恋する女の子は強いなー」

「…でもよ真慧。珠ちゃんが組を継がないとマズイと思うんだよな」


 そっか。課題は夏帆さんのことだけじゃない。

 組同士が仲がいいなら、やっぱり二人の結婚は絶対条件なのでは…。


「その二人が結婚しなくたって組は潰れないでしょ。双方の都合がいいだけでしょ?知らんけど」

「適当だなお前はよぉ!」

「ま、頑張ってよ!でも憂希美ちゃんも大変だねー、珠央の嫁になったらヤクザの嫁ってことだぜ!」

「えっ…」


 真慧くんはもう話は終わったと言わんばかりに立ち上がり倭田わだくんに全てを押し付けた。


「じゃ、お会計よろしく〜」

「あ!オイ!…くそ言いたい放題言いやがって…大丈夫か?白澤さん」

「依岡くんのお嫁さん…」

「あー…大丈夫そうデスネ」


 私のやることは決まった。

 依岡くん、私はあなたが好きです。

 依岡くんが辛い思いしなくていいように、私、頑張るよ。

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