第30話 ヤクザのおうち

 放課後になってすぐ私は倭田わだくんを呼び出した。


「倭田くん」

「あ。白澤しらさわさん」

「ちょっと、来てほしいんだけど…」

「?」


―――


依岡よりおかくんの家、知ってる?」

「え?まさか行く気?」

「連れて行って。お願い」

「あー…いや…でもよ…たまちゃん家は」

連合会、でしょ」

「…!なんで白澤さんがそれ…」

「依岡くんの友達から聞いちゃったの。それも謝りたいし、私が勝手に騒いで依岡くんに嫌な思いさせちゃったことも」

「…いや、白澤さんは悪くないよ。今日のアイツちょっと変だったし。…いいよ、わかった。案内する」

「ありがとう」


 こうして私は依岡くんの家に行くことになった。

 ヤクザの、おうちに…。



 依岡くんの家を訪れた私たちはその家の迫力に圧倒された。


「すごい…豪邸みたい」


 まだ敷地内にも入ってないのに家の大きさがうかがえる。

 古風で映画に出てきそうな家だった。

 倭田くんは何度か来たことがあるのか慣れたようにインターフォンを鳴らし門の外で人が来るのを待つ。


 大きな門から現れたのは少し太った男の人だった。


紋次もんじさん。どうしたんすか?」

ひびきさんお久しぶりっす。珠ちゃんいます?学校行かずに帰っちゃって」

「へい、ちょいとお待ちを」


 響と呼ばれる男が門の奥へと姿を消す。

 依岡くんを呼んできてくれるのだろう。

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