第七章 要注意人物 夏帆さん

第31話 仲直り

珠央たまおさん!学校の子、来てますぜ」

「はぁ?」

紋次もんじさんと、女の子っす」


 しばらくすると着物を着た依岡よりおかくんが顔を覗かせる。

 こんな時だけど、とてもカッコいいです。


「ここじゃなんだし、一回入って」


 依岡くんに案内され古そうな家の門をくぐると、またも和風な風景が広がっている。

 暗い色の木製の家に、広い庭があって池もあって…。


 依岡くんが急に振り返り問いかける。


「で、何?」


 倭田わだくんが何か喋ろうとするが、私は何がなんでも早く謝りたかった。


たまちゃ…」

「依岡くん!ごめんなさい!」

「…いや」

「依岡くんは、私のわがままに付き合ってくれただけなのに、私ばっかり舞い上がって…騒いじゃって…依岡くんを居づらくさせちゃって…」

「居づらいとかないけど」

「で、でも早退させちゃって…私が変に騒いだから…」

「余裕なくてさ。ごめん。白澤しらさわ悪くないから、気にしないで」


 倭田くんは安心したように笑った。


「よしよし!仲直りしたな!」

「ふう…」


 って!安心してる場合じゃない!


「依岡くん!ごめんなさい‼︎」

「それさっき聞いたけど…」

「違うの…この前学校の帰りに真慧まことくんに会ってね…」

「うん」

「真慧くんに依岡くんの家のこと聞いちゃったの…本当は依岡くんから聞かなきゃいけなかったのに誘惑に負けて…ごめんなさい…」


 真慧くんと知り合いだったことが驚きだったのか、倭田くんがびっくりしていた。


「えっ、白澤さん真慧と知り合いなの?」

「依岡くんとデー…かけてるときにたまたま会って」


 少し困ったように軽くため息をついて頭をかく依岡くん。


「…まあいいよ。別に言うほどのことじゃないと思ったから言わなかっただけだし」

「うぅぅ…ごめんなさい…」


 すると後ろから女の人の声が聞こえた。

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