第14話 おとこのここわい

 とは言ったものの…。

 依岡よりおかくんがいるのは男の子ばかりのグループ。

 とてもとても、難しい。

 一言声をかけるだけでも、一日のエネルギーを使い切ってしまいそうだ。


珠央たまおー!バスケしよぜ〜」

「うん」

華嵩はなたかお前またそんな本持ってきてんのか」

「あ?文句言うなら見せねえぞ?」

「見ないとは言ってないだろ!」

「お前らいい加減にしろよ…センコーにバレたらどうすんだよ」

「なんだもんちゃんお前も見せねえぞ?」

「いいよ別に今時エロ本とかヘンだろ」

「お前はわかってない!インターネットに支配されたこのネットワークヒューマンが!」

「なんだそれ」


 男子って元気だ。

 話しかけづらい。

 どうしたら…。


「…ごめん先行ってて」

「なんだ珠央、便所か?」

「うん」

「んじゃ先やってるわ」

「オーケー」


 あっ、依岡くんがみんなと離れた!

 今がチャン………

 あれ?こっち来る…?


「何?」

「っ⁉︎」

「ずっと見てたけど何か用?」

「えっと………」


 バレてるし。


「…なんもないなら行くけど」

「ま、待って!」


 依岡くん、怖い。

 目がまっすぐこっち向いて…。


「…あ、あの…えっと…」


 喋れない‼︎

 何言おうとしたんだっけ⁉︎


「あ………」

「?」


 そうだ!ドーナツ!

 ドーナツ食べに行こうって言うんだ!

 って言える⁉︎

 無理では?

 無理だよ恥ずかしいよ!


「…わかった。ちょっとまって」

「え?」


 そう言って依岡くんは携帯を触りだした。


「あの…よ、依岡くん?」

「…もしもし紋ちゃん?やっぱ今日帰るね。…うん。ごめん。…うん。…うん。またね」

「……」

「なんか長くなりそうだからどっか行こう」

「…⁉︎」


 倭田わだくん。

 依岡くん取っちゃってごめんなさい。

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