第三章 恋もモデルも

第13話 自信なんてつかないよ

 私は多分、一般的にみたら可愛い部類だと思う。

 そう感じたのは中学生の頃。

 男子からの評判が良く、好意を向けられることが多かった。告白もかなりされた。


 話したことのない人から想いを伝えられる度に、どうして私なんだろうって感じるようになった。

 そしてそのうち、なんとなく、男の人を警戒するようになった。

 本当に申し訳ないんだけど、私にも理由がイマイチわからない。


 でも、依岡よりおかくんは、どこか違って見える。

 どうしてだろう?

 …依岡くんは、私のことどう思ってるのかな。

 考え出すと依岡くんのことばかり考えるようになってしまった。

 見た目もカッコいいもんなー…モテそう…。


 また夢中になって考えていたら乙寧おとねに心配されてしまった。


憂希美ゆきみ。憂希美〜おーい」

「えっ?」

「大丈夫?ぼーっとしてるけど」

「あ…うん………考え事してた」

「はは〜ん…?あんた、好きな人出来たでしょ」

「⁉︎」


 面白そうだと弥子やこも話に加わってくる。


「憂希美好きな人いるの⁉︎誰誰?」

「言わない!」

「いることは否定しないのか」

「いない‼︎」

「もう遅い!さあ白状しろ〜〜!」

「やあああああ‼︎」


 取り押さえられ、無理やり言わされた。


―――


たまちゃんか」

「ま、そうだよね」


 死ぬほど恥ずかしい…穴があったら入りたい…。

 弥子は気になるのか、どんどん質問をしてくる。


「そもそも二人話したことあったの?」

「…私がモデルやってるの知ってて」

「それまたなんで?」

「…と、とにかく知ってて!私が広められたくないの知ってたから、あの時庇ってくれて…」

「うんうん」

「………です」

「「それだけ?」」

「そうだよ‼︎悪い⁉︎」


 私にとっては嬉しかったの‼︎

 ばかにしてくれちゃって。


「いや〜〜…数多の男をオトしてきた憂希美がこうも簡単に…」

「別にオトしてないし…」

「でも珠ちゃん彼女いないと思うよ?そういう話聞いたことないし」

「ほんと⁉︎…あ」


 心から喜んでしまった。


「めっちゃ食い気味じゃん」

「う………」


 きっと私はもう、依岡くんのことが本当に好きになったんだ。

 冗談か本気かわからないが乙寧が提案を投げかける。


「憂希美に告られて断る男子なんていないだろうし、告白したらぁ?」

「何言ってるの無理無理無理!」

「帰り誘ってみたら?ほら、助けてもらったお礼みたいな感じでドーナツでも奢ってさ」

「そ!んな、こと…」

「出来るって!私が仲介でもしようか?」

「それは…」


 確かに乙寧は男子とも仲良いし、依岡くんと話すきっかけを与えてくれるのはありがたい。

 でも、その程度の勇気で、これから依岡くんにアピール出来るとも思えない。

 自分でどうにかしないと、ダメかなあ。


「バカ乙寧。こういうのは本人がやらないとダメよ」


 はい、そうですよね…頑張ります…。


「それに憂希美だって」

「え?」

「あ、そうだよね。二人きりがいいよね。ごめん気が利かなくて」

「違くて‼︎二人に申し訳ないってこと!」

「憂希美今日元気だね」

「う…」


 自分に自信も持ってるわけじゃないし、自分で可愛いなんて思えるほど自惚うぬぼれてもいない。

 …つもりなんだけど、お姉ちゃんには。


『憂希美は可愛いんだからオシャレしなよ〜』


 そう言って髪を伸ばして、染めさせられて。

 クラスメートにも。


『白澤さんスタイル良!アイドルでも目指したら?』


 そう言ってスカートを短くさせられて。

 槙野まきのさんにも…。


『あなたならトップクラスのモデルになれるわ』


 そう言ってモデルをさせられて。

 ちやほや、甘やかされて生きてきた気もする。


 だからこそ、もう、自分で決めて行動しなきゃいけないんだ!

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