第10話 最強ライバルの正体

<拓斗、女の人と出かけたわね。外でランチでもしているのかな?>


<あ、拓斗が戻ってきた。一人みたい>


<拓斗、千尋と美鈴さんを箱から取り出して、二人並べて机の上に座らせてくれたけど……。さーて、拓斗に問いただすこと、たくさんあるぞ>


「お帰りなさい、拓斗。さあ、話してもらいましょうか。今日来た女の人は誰ですか? 千尋だけじゃなくて、ここにいる美鈴さんや他の子たちも、みんな知りたがってるんですから! そうだ、クローゼットにいる子たちにもよく聞こえるよう、クローゼットの扉は開けておいて下さい」


「黙ってて悪かった、ですって? いえ、そんなことはどうでもいいんです。ただ、千尋たち、心配なんです。あの女の人が、拓斗のガールフレンドだとして、どうして彼女の前で千尋たちを隠してしまうのか。もし拓斗とあの人が結婚したら、千尋たちどうなってしまうのか。え? 先走りし過ぎ? へへへ。そうですね、美鈴さん」


「あの女の人は、小学校、中学校で同級生だった人ですか。へー。それで?」


「これまで付き合ったことはなかったけど、3か月くらい前、偶然商店街で会って、それから付き合ってるんですね。昨日は、初めてこの部屋に呼んだんだ。その人のお名前は? 綾香あやかさん、ですか。家はこの近くなんですね」


「でも、どうして綾香さんに千尋たちのことを隠すんですか? え? 何ですか? 男が人形集めして、恥ずかしい? ぷっ! 言ってる意味が分かりません! ねえ、美鈴さん」

 美鈴や他の人形たちも、なぜ恥ずかしがるのか分からないと、疑問の声をあげている。


「ほら、みんなも言ってるでしょ。この趣味に、性別は関係ないですよ。次に綾香さんがここへ来たら、千尋たちを紹介して下さいね。約束ですよ。え? ここへ連れて来る前に話して、反応を見てから連れてくる? ずいぶん用心深いですね、拓斗は」


「それで、もし将来、拓斗が綾香さんと結婚したら、千尋たち、どうなるんですか? ……。結婚話はまだ早い。それはそうですね。また先走っちゃって、済みません」


「『話は変わるけど』? はい、何ですか? 今週の木曜日から、二泊三日で出張するんですか? その間、私たちは箱の中ですね。分かりました。美鈴さんや他の子たちとおしゃべり出来るから、もう大丈夫です。でも、出張する日まで、いっぱい可愛がってくれなきゃイヤですよ」


 すると、他の人形たちが、「千尋ばっかりで、ずるい!」と騒ぎ出した。


「はい! 分かりました。それじゃあ、順番にみんな飾ってもらいましょう。一人ずつじゃなくて、数人ずつだったらできますよね?」


「あ、そうだ! ここに来た時に一度だけ箱から出してもらったけど、その後一度も出してもらえない子がいるって聞きましたよ。その子も、出してあげて下さい。その子、可哀かわいそ過ぎます!」


「でも、出張する日の前の晩、ベッドサイドのワゴンで寝るのは、絶対に千尋ですからね。約束ですよ」


 木曜日の朝、拓斗は出張していった。


<退屈だなー。美鈴さんや他の子たちとのおしゃべりにも、飽きちゃった>


 ところが、土曜日の朝、大変なことが起きてしまった。




 

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