第4話 武装巨乳娘

<この女の子、市松人形でも、ビスクドールでもないね。ずいぶん大人びてる。それに、とてもセクシー>


<着ているワンピースはピチピチで、体の線がはっきり見えちゃってる。ワンピースの色は黒だけど、白色の蝶が描かれているわね。スカートの裾には、腰の辺りまで届くスリットがいくつかあって、風もないのにひるがえってる。裏地は真っ赤ね。編み上げブーツをはいた長い足が、ももまでむき出しだ>


<ピンクのロングヘアも、風がないのにたなびいている。頭のてっぺんから二本突き出している毛の束は、アホ毛ってやつ?>


「こんにちは! きょう来た千尋です。よろしくお願いします。あなたのお名前は? ……。あの、ずいぶん大胆なお洋服ですね。でも、素敵ですよ。長くて大きい剣を構えてますけど、どうして? 見たところ、この部屋に戦う相手はいないと思うんですけど。それとも、悪い熊さんでも隠れているの?」


<あれ? 一言も返事しない。どうしたんだろう。お話しできないのかな? それにしても、ずいぶん大きな胸。あれじゃぁ、重くて肩が凝るでしょうね。長い髪の毛は、宙に浮いたまま固まっちゃっているみたい>

「ねぇ、拓斗。この子、返事してくれないんですけど、どうしたんでしょう」


「はーぁ。そうなんだ。この子はプラスチックで一体加工されているから、お話しできないんだ。フィギュアっていうの。この子のようなフィギュアは、他にいるの?」


「この子だけ。そう。それで、あの、えー、ひとつ質問しますけど、拓斗が好きなタイプは、この子のように、胸の大きな子なの? 違う。それ、本当?」

<ママはどうして、千尋の胸をもう少し大きく作ってくれなかったんだろう……。でも、今さら言ってもしょうがないね。拓斗の言葉を信じましょ。第一、拓斗は頑張って千尋を落札してくれたんだから、一番好きなタイプは千尋ということよね>


「これで10体の子と会ったから、あと二人ね」

 次に出てきたのは、おかっぱ頭だけれど、男の子のようだった。ガラスケースに入っていた。

「こんにちは! きょう来た千尋です。よろしくお願いします。あなたのお名前は?   金太郎。いいお名前ね」

<この子、ほとんど裸だ。体の前側には、いちおう赤い菱形の布を付けてるけど。金色の糸を使った刺繡ししゅうで、マルの中に「金」と書いてある。でも、背中やお尻は丸出しね。風邪かぜひかないかしら。大きな斧を持ってるけど、これで何しようというの?>


「ん? あなた、五月人形というの。拓斗が5歳のとき、お爺ちゃんから贈られた! へー、ずいぶん昔ね。金太郎君は、熊さんと遊んでいたの。熊さんに食べられなくてよかったね」


「次はいよいよ最後のお人形ね、拓斗。また男の子? 違う。現代風の市松人形? ということは、女の子ね。早く会いたいな」

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