第十四話 襲われたB地区
店の裏から刃物を持った、つるっ
「何しに来た?」冷静なトーンでプジョルが男に問いかけた。
「なぁに、それはこっちセリフだ」男は気味悪くニヤついた。
「店の主人はどうした?」
「さぁ?どうだかな?」
「あ?」
「おっと、
タトゥーの男がそう言うと、店の外にギャングたちが集まってきて、あっという間に店を囲われてしまった。十人はいるだろうか。どれもガラ悪そうな見た目で、手には短剣や魔術のための短い杖を持った。ギャングというよりも金のない盗賊というような感じだった。
集まってきたギャングたちを見たプジョルは、
「困るよ。今日はそういうつもりで来たんじゃない」
「お前らの都合に合わせる義理はハナからねぇよ」
「何が目的だ」
「目的も何もないだろう。教えてどうするんだ。今日でお前らは終わるというのに」
タトゥーの男の手がピクッと動いた。それに反応して、プジョルは男に飛び掛かった。それをきっかけに、外にいるギャングたちが一斉に店の中めがけて魔術を放つ。
パウルは銀司を店の奥へと突き飛ばした。銀司は飛ばされ、床の上を転がった。爆風が建物の中に入ってきた。ガラスの割れた音が響く。銀司は懸命に体を丸めた。腕の隙間から砂埃が入り込んで顔にかかる。銀司は目を瞑った。ものが壊れる音、打音、不快な音たちが耳に響いた。
音がやんだ。
外が落ち着くと、銀司は店の外に出てパウル元に駆け付けた。
そこにはギャングたちが全員倒れていた。たった、数秒の
「すごい……」
銀司はパウルが敵と戦っているところを見たのはこれが初めてだった。まだ組織の幹部候補でもない若者の圧倒的な実力に銀司は目を丸くした。
「どうせこいつらは下っ端さ」
パウルは仕事が片付いたように、手を叩きながら言った。気絶をしている者もいれば、腹を抑えてうずくまっている者もいる。
「しかし、俺らに喧嘩売るとは教育が行き届いてないね」
店の中からプジョルが男を引きずって出てきた。他のギャングたちが倒れているところに放り投げた。
ん?
しかし、ここで銀司はある異変に気が付いた。あたりを見渡して、その異変の正体を探した。あるべきところに何かが居ないのだ。
銀司はすぐに気が付いた。店の外にある標識に
銀司は急いでウマの元へと駆け寄った。傷つかないようにそっと網を外した。安心させようと優しく馬体をさすると、前脚に刃物で切られた跡があった。これを見た銀司は、プジョルとパウルを大声で呼んだ。
「何か妙に計画的だな」プジョルはウマの状態を診て呟いた。
「これはアレか、俺らが来ることを分かっていやがったな」
パウルはウマの傷口を押さえて魔術で止血している。
「つまり待ち伏せされてったことか?」と銀司が言った。
「何か嫌な予感がするな」プジョルは顔をしかめた。
「だがその前に店の片づけをしねぇとな」
止血が終ったパウルが、店が荒れているのを見て言った。
店の主人は店の倉庫のなかで伸びている状態で発見された。幸い、大した怪我はなさそうだ。店主の口元から微かに薬草の匂いがした。恐らく睡眠薬で眠らされている。店の主人を起こして、事の説明をしたあと、壊れた壁の破片などで悲惨な状態になっている店内の片付けに取り掛かった。
割られたガラスを掃いているところに、一羽の黒い鳥が飛んできた。これはファミリーが連絡手段で使っている、伝書バトのような役割をしている。
黒い鳥に気付いたパウルの肩に鳥はとまった。パウルは足に結んである布切れを取って、それを広げた。布を眺めているパウルの表情はすぐに暗くなる。
「向こうで攻撃を受けたらしい」険しい顔で言った。
「なんだと!?」プジョルが強い口調で反応した。
「隣のA地区だ。怪我人も出ている」パウルは伝書が書かれた布を握りしめた。
「ギン!走れるウマだけ出せるように準備しろ!急いでA地区へ向かうぞ。どうやら悪い勘が当たっちまった」
プジョルは銀司にA地区に向かうよう言った。どうやら銀司と同じように、クラードファミリーの影響範囲外に出向いた構成員が攻撃を受けたらしい。負傷者も出ている緊急事態だ。
特に傷が深かった一頭を残し、ウマを二頭、銀司はパウルの背中に飛びついて、A地区へと向かった———。
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