プロローグ part2

100年前、20XX年


「ほらいくよ!とってきて!」

ボールを投げる娘、追いかける芝犬のからあげ。我が家のいつもの風景だ。


「ほんとにからあげはボール遊びが好きだなぁ」

「ねぇねぇお父さん、最近からあげ新しい芸を覚えたんだよ!」

「へぇそうなのか。どんな芸だい?」

「あのね、立って歩くんだよ!見て見て!」

娘がそう言うと、からあげはリビングから器用に2足歩行で歩いてくる。


「お〜すごいじゃないか、からあげ」

「ワンワン!」


たしかに凄い。娘の元から私の元までざっと4メートルは距離がある。犬はこの距離をあんなに上手に2足歩行で歩けるものなのだろうか?


そんな疑問を浮かべていると


「先週、アメリカのイエローストーン国立公園に落下した隕石から新しい元素が発見されました。アメリカの国立研究センターの発表によりますと、この隕石を構成している元素の中に地球にはないものが含まれていたそうで、この元素がどんな性質を持っているかについてはまだ分かっていないようです」


「新しい元素が発見かぁ」

「ねぇねぇお父さん、元素ってなぁに?」

「ん、元素って言うのはな」


「続いてのニュースです。ここ数日、世界各国で動物が2足歩行で歩いているという報告が相次いでいるそうです。専門家の話によりますと、野生の動物達が自力で2足歩行するといった話はこれまで例がないため、動物達が一体どのようにして2足歩行を学んだのか見当もつかないということです」


娘の質問に答えようとした時に舞い込んできたニュースに私は驚いた。世界各国で動物達が2足歩行をしている。からあげが歩いたのも関係があるのだろうか


「なぁひかる、からあげが歩き始めたのはいつだ?」

「えっとねぇ、一昨日からだよ!からあげ急に歩けるようになったの!」


練習もせずに歩けるようになるなんてことがあるのか?ニュースで言っていた時期とも重なる。世界中で動物たちになにか起こっているのだろうか?


「お父さんどうかしたの?怖い顔して」

「あ、いやなんでもないよ。少し考えごとをしていただけさ」

「なにを考えてたの?」

「なに、しょうもないことだよ」


そうだしょうもないことだ。動物たちになにか起こっているだなんて、動物の進化が始まったとでも言うのか。


私は自分の考えがなんとバカけだものだと思い。もうこのことは考えないようにした。しかし、私はこの時知る由もなかった。この現象はただの始まりにすぎず、私が知る世界は既に変わり始めていたということに。

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アーズ @takegin

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