第13話 メロンはウリ科


「では、買い取り金額が……」


 メロンと格闘の末に勝利したので適当にいくつか収穫して無事帰還!

 帰りはそのまま帰るだけだったので比較的早かった。もちろん幻覚やなんだの影響でまっすぐは帰れなかったけど、モンスターも居ないから索敵に意識を大きく割く必要がないのでサクサク進めた。まぁ、それでも数時間はかかったけど……。日の出とともに起きたのにメロンと激闘を繰り広げ、ダンジョンから脱出したらもう十一時過ぎと。

 帰ったら聖はもう学校行ってるだろうしまずは寝よう、睡眠大事。

 毎週末の競売を待った方が勿論高くなるんだけど、手続きめんどいからそのまま売っちゃいまーす。決して早く帰りたいからとかじゃないよ別に、うん。


「口座振り込みでよろしいですか」


「あ、はい。それで」


「かしこまりました。では、帰還報告も終わりましたので以上になります。お疲れさまでした」


「あ、はい。どうも」


 なんかコンビニの店員さんとかと決まったやり取りするのあっはい、あっどもってなるよね。え、俺だけ……?

 はい、帰りましょう。





「ただいまー」


 帰ってきましたマイホーム。

 途中、電車でうとうとして乗り過ごすところだったけど何とか帰ってきた。平日のこの時間は通勤ラッシュとかに引っかからないからまだまし。座れるだけいいかな。朝、あんなたくさんの人と一緒に登校、出勤してぎゅうぎゅう詰めの電車で疲れて帰る皆さん本当にお疲れ様です。僕には無理です。

 荷物を片してシャワーへごー。昨日やっぱお風呂入れてないから寝る前にやっぱ入りたいよね。温泉とか好きなんだよな、ずっと入ったままボーってするの好き。


「しみる―」


 疲れた体に熱めのシャワー最高です。

 お腹すいたからカップラーメンでも食べようかなぁ。





「では、ご開帳―」


 何をしているかって?メロンですよメロン。

 聖が返ってくるまで待っとこうと思ったけどやっぱデザート食べたくなっちゃった。美味しいフルーツ持ってるんだからしょうがない。味見大事だしね。

 きれいに洗ったらヘタを取ってまずは大きく二等分。メロンの甘く芳醇の香りがふわっと広がっていく。果肉は綺麗なオレンジ色。所謂赤肉メロンっていうタイプ。赤肉は青肉に比べてコクがあるなんて聞く、逆に青肉は爽やかな後味らしい。さてこのメロンはいかに。

 スプーンですくうようにして種を取る。二等分にしていたこいつをさらに半分。そして、もういちど半分。そしてできたのはよく見る八等分のメロン。これをスプーンですくうように食べてもいいのだけどここでひと手間。皮と実の間に包丁を滑らせていく。そして、小さく一口大に切っていく……このひと手間が大事なんです。

 準備完了!……でけどすぐは食べない。片付けを先にしておきますよー。


「飲み物何にしようかなぁ」


 メロンに会う飲み物は何だろうとちゃちゃっとネットで調べてみる。

 どうやら果実全般に紅茶がいいらしい。お酒もいいと書いてあるけど今日は我慢、我慢。文明の利器でさっとお湯を沸かしてポットで紅茶を入れる。銘柄?品種?はキャンディ。良くも悪くもクセがなく飲みやすいから甘い果物にはぴったり……ってネットに書いてありました。え、メロンってきゅうりの仲間なの?へー、ウリ科の一種なんだ……っと違う違う、今は紅茶。

 聖がなんか甘いものとか好きだから紅茶とかも結構あるんだよな。俺は全然わかんないんだけど。ありがたくいただくとしよう。


「最高級のメロンと紅茶、至福の瞬間だな。いただきます」


 一口大に切っていたメロンをフォークで口に運ぶ。口に入れた瞬間ジュワッと果汁が口いっぱいに広がる。

 甘い、そしてコクがある。しかし、その中でも口の中に糖度が残るような甘ったるさはなく爽やか。果肉は柔らかく噛めば噛むほど口の中で溶けていく。

 吸い込まれていくようにもうひと口を口に運ぶ。今度はゆっくりとメロンのうまみを味わうように。その甘さとコクに酔いしれる。

 ここで熱い紅茶を一口。

 ストレートの紅茶が口の中をリフレッシュしてくれる。しかし、ネットの言う通りくせのないものを選んだからかメロンの甘みを邪魔することは無い。

 そしてメロンをもう一口。

 紅茶を飲んだ後だからかメロンの甘さがより感じられる。そして、赤肉でありながらも後にまったりと残るようなこともない青肉のような爽やかさが際立つ。

 メロン、紅茶、メロン。

 至福である。





「おはよー」


 あの後もう一切れ食べて片づけをしたらどっと疲れが出たのか寝てしまった。外は綺麗な夕焼け色。

 こういう昼から夕方までがっつり寝るのはなんか背徳感あっていいよね。


「ん、おあよー」


「おう、聖帰ってきてたのか何食べて……」


 そこには居たのは無造作に置かれたメロンの皮たちと五切れ目を頬張っている聖の姿だった。

 いや、食いすぎだろ。

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