第12話 果実の楽園③

 イチゴ収穫終了。

 収穫方法はなんと顔面にぶつかってはじける前に優しく高速でつかみ取るとかいうあほみたいな方法です。絶対他の方法があったと思うし、俺が間違ってると思う。良いんだよ別に、手に入ったんだから。

 そして、今はサクランボの収穫中。十分ぐらい離れたところにサクランボの群生地がこれまたあったのよ。運がいいね。

 イチゴは弾丸みたいに飛んでくるから身構えていたけどサクランボは特に変なことはしてこなかった。いや、それが普通なんでけど……。

 普通のサクランボよりは一回り大きいサクランボを一つ一つ手に取っていく。よくある二つセットみたいななり方じゃなくて一つ一つ個別でなっているからだいぶ小さいリンゴみたいだ。きれいな赤、一つ食べちゃおうかなぁ。


「いただきまーす」


 例の魔法の箱から取り出した水筒の水でさっとゆすぎ、一口で食べる。爽やかな甘みと程よい酸味でこの一粒だけですべてが完成された味のように感じる。張りのある皮を噛むとプチッとした食感が返ってくる。そして、ジュワッとした果肉。噛めば甘い果汁がどんどん出てくる。美味い。

 柄についたままの種はちゃんと捨てたりせずに持ち帰ります。別に捨てたところでそこにまたサクランボできるだけだからいいと思うんだけど一応ね。環境大事、ポイ捨てダメ、ゼッタイ!!


「イチゴにサクランボときた、バナナも取ったし後は……何だっけ?」


 なんだかんだ昼時だし、あと一品ぐらい見つけたら帰ろうかな。聖にはもしかしたら二日かかると言ったけど、やっぱ日帰りしたい。やわらかいベッドで寝たいです。

 とりあえず腹ごしらえからかな……さっきからお腹が悲鳴を上げてます。



「バナナうっっま!」


 栄養価も高いうえにお腹にもたまる。素晴らしいね。

お昼ご飯の代わりにキュービック状の某栄養食品を食べたけど流石に足りなかったからバナナ食べてしまった。色がオレンジだしまじででかいから少し躊躇したけど皮をむいたら普通のバナナだった。むっちゃ太いしでかいけど。

 砂糖のように口に残るような甘味ではなく程よい甘さ。バナナが主食の国が分かるほどしっかりと食べ応えがある。けど、単調な味の中に深みのあるうまみと次の一口を食べたくなる甘味。焼きバナナとかチョコバナナとかしたいなぁ。

 ちゃっちゃともう一品見つけて帰りましょう。愛しの妹が待っています(待ってない)

 もう一個バナナを取り出してモグモグしながらいざ出発。





「なんでぇ~。果物どこぉ~」


 かれこれ数時間色んな所をさまよったけどなかなか次の果物を見つけきれない。内半分ぐらいは砂漠ゾーンだった、暑いったらありゃしない。おやつの三時はさすがに

 で、目の前は沼地と。日も沈みはじめる前にさっさと開けたところに出たい。足元がおろそかになるのはほんとに危ない。できれば日帰りしたいけど無理かなぁ。夕方や夜は基本的にどんなダンジョンであっても移動は危険とされている。もちろんずっと夜のダンジョンや夜しか出ないモンスターもいるから一概には言えないけど。いくら探索者としてダンジョンに潜っていくうえで夜目に慣れてきているとはいえ安全マージンはいくらあっても足りない。

 とりあえず今日はあきらめて野宿できそうなところを探そうかな。


 沼地を抜けたらおなじみの森ゾーンに突入!

 モンスターがいないから木の上とかで寝る必要がないのは助かる。適当に枯木や枯葉を集め、石を土台に焚火を作る。そして、キャンプに大助かり着火剤とライター。マジックボックスこと亜空間型……保存、違う、亜空か……。こいつに一通りの野営道具を入れておくと便利。まだ日は沈みきってないけど火も起こして、寝袋を用意しちゃおう。


「人類の歴史の結晶だよなぁ」


 人が猿から進化した時に一番の発明というか発見は火を使うことらしい。火はすごい、料理に使えて暖も取れるし見てたら落ち着く。最後のはなんか違う気がするけど火を使うための道具がたくさんあるのは理解できる気がする。意外と身近だ。

 そんな感傷に浸っているうちにあっという間に簡易な野営準備完成。てってれー、寝袋と焚き火!

 それだけかよって感じだけど日々ダンジョンで命を巡る戦いをしている俺たち探索者にはこれで十分。というか、寝袋は咄嗟の時に動けないから焚き火の横でそのまま寝るなんて奴もいる。ここは徘徊してるようなモンスターいないから食人植物の近くにいないことだけ気を付けておけば大丈夫。あと、変なキノコとか食べないことね。


「寝る前にあれやってみっか。一度やってみたかったんだよね、火起こし!」


 あの木の棒をくるくるって回転させてやるやつ。男の子なら一度はやってみたくなるものじゃないか、多分。もうライターで焚き火はつけてしまったけどこんな時しかしないだろうから挑戦だぜ!

 ミッション   火を起こせ

 タイムリミット 日没まで(残り1、2時間)

 特級探索者の俺の身体能力にモノを言わせたら楽勝だろ、ふはははは。





 はい、おはようございます。

 結論から言いましょう。火は付きませんでした。あれだよ種火だっけ?あれまでは作れるの、けどそのあとが不器用すぎてふーって強くしすぎて消えたり、種火の屑を間違えて地面に落としたり散々だった。なんか、慣れないことは緊張するね、やっぱ、うん。

 てことで、さっさと不貞寝して起きたばっかです。流石に布団と結婚できる俺でも地面に寝袋は熟睡できない。日の出と一緒に動き出す。眠いけど、むっっちゃ眠いけどね!

 もう一品見つけてさっさと帰ろう。聖もきっと心配してる(してない)



「うおー!!メロンー!!」


 見つけた、見つけた!30分ぐらいでメロン畑に到着。いやー、運いいねさすが俺。ぱっと見、変な感じはないかな。顔面に飛んでくることとか色がやたら変とかそんなことはなさそう。

 ちゃんと熟れてるし純粋に美味しいメロンなんだろうってことでさっそく収穫。いただきますね〜。お、むちゃくちゃずっしりしてるな。蔓を切ってマジックボックスに直そうとすると蔓がするりと手に絡まる。


「なーんか、嫌な予感がしまーす」


 そんな俺のぼやきに正解というようにどんどん蔓が伸びて絡まっていく。両手から肩に首、そして顔がどんどん蔓と葉っぱに覆われていく。

 おー、ちょうど葉っぱが口を塞いでマスクみたいになってるわ。これが本当のマスクメロンってか!

 ……。

 ごめんなさい。

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