第11話 果実の楽園②


「あっっっつ!」


 光が差してきたと思ったらいきなり南国のジャングルっぽくなってます。ここら辺探したらトロピカルフルーツ的なのあるんじゃない。バナナとかパインとか。

 ちらちらと周りを見まして見ながら周囲を歩き回る。すると、やや開けたような場所が先に見える。行ってみるとやたらと透き通った池のようなものの周りにバナナのようなものを大量にぶら下げた木を数本見つけた。


「南国の海みたいな色してんな」


 すんごいスカイブルーで透き通っていてよくCMで見る島と海逆にしました!みたいな光景が目の前に広がってて違和感がすごい。

 あとバナナのような、だ。決してバナナではない。だって色オレンジだし、バナナ(暫定)一本が俺の腕ぐらい太いしでかいんだもん。後、一房じゃなくて一塊になってる。全然隙間ないもん、一周してるし。なんか皮向いた後のトウモロコシみたいにぎっちりだ。

 一応、持って帰るか……。


 バナナもどきを回収して先に進む。

 今回はプリンアラモードを作るため、まず欲しいのはサクランボといちご。あと確か、聖がキウイやメロンも欲しいと言ってたな。あるかなぁ……。

 このダンジョン実はダンジョンそのものが植物判定なのかなんか枯れたり成長したりする。つまり地図を作ったところで数日後にはすっかり中の構造はぐちゃぐちゃに入れ替わっているのだ。めんどくさいったらありゃしない。

 一応、どの果物も常にこのダンジョンのどこかに必ず存在しているらしいが全部探しきるような時間はない。とりあえずサクランボといちごだけは確保して、あとは無かったらスライディング土下座で許してもらおう。

 さぁ、いざ行かん最高のプリンアラモードを求めて!!



 はい。暑い、寒い、乾燥している、じめじめしているを体験しました。

 やっぱふざけてるだろここ。バナナ?を取った後はしばらく暑かったけどいきなり寒くなって針葉樹の森みたいなとこになった。そこらへんはあんまり良いものは無かったな。そして、問題の乾燥……というかほぼ砂漠の地帯では一軒家くらいでかいサボテンがレイピアみたいな針を飛ばしてきました。

 なんなん、誰ここのダンジョン。ふざけてるだろ。誰ですか?ここに行こうとか言ったの?……大元をたどれば悪いのは俺か。


 今いるとこはやたらじめじめしている。湿地帯かな?

 湿地と言えばこの国では扇状地などが思いつく。桃などがよく育つらしい。だけど生憎今いるのは海外のような湿地帯。なんか果物が実ってる気配は全くない。ただただ時間と労力だけが奪われる。ワニとかいないだけましか。

 べちゃべちゃと泥が飛ぶ。ブーツに泥がくっつき重くなってくる。歩きにくいし体力も奪われる。別にモンスターと戦ったわけでもないからそこまで疲れたわけではないけど単純に歩きにくい道というのは嫌だ。さっさとこの湿地帯抜けよう、そうしよう。

 頑張れ俺!いくぞ気合を入れて。


「よっしゃ!」


 掛け声挙げて大きく一歩。

  ベチャッ

 泥が飛んで顔につきました……むかつく。


 湿地帯を抜けると普通の森となっていく。この森の中に多く果実がなっているらしいから期待大。そして、食人植物の出現率も期待大。赤保留だね。

 森の中にはちらほらキノコのようなものが見える。ぱっと見は椎茸みたいなものやちょっと大きい松茸のようなものも見られる。あと明らかに毒だろって感じの色のものもある。もちろん食べないけどね。

 進んでいくとやや霧が出てきた。視界が奪われて行き、目の前が白く塗りつぶされていく。

 霧が濃くなってきて前がさらに見にくくなる。

 こういう時はいきなり目の前に何かが現れてきたりするから危険。ここはモンスターがいないからまだましだけどゲリラ戦は本当によくない……主にびっくりするという面で。


「慎重にね、慎重に」


 自分に言い聞かせるように呟きながら進んでいくと顔にトロリとした水滴がつく。

 霧で曇っているからその影響か。何だっけ、凝結、凝固?忘れてしまった。それにしてもなんだこの水なかなか頰にくっついて落ちてこない。霧が出ているとはいえここまで変な……変?


「えっと……こんにちは?」


 ゆっくりと上を見ると、そこにいたのは俺の上半身ぐらいなら食べれそうな大きい口を開けたハエトリソウでした。





 特に攻撃してくるわけでも無いので食人植物ゾーンを適当にスルーする。どうやら霧も奴らが用意したもののようだった。通り抜けたらパーっと一気に快晴。そして、そして目の前に広がるのは広大なイチゴ畑なわけですよ。最高だね。

 事前に調べた情報によるとイチゴの周りにはよく他の果実も実ってることが多いらしい。やっぱイチゴ美味しいしね、果物何が好きって言った時一番か二番にはあがるよね〜。運が良ければさくらんぼもないかなぁ。


「さっさと収穫して帰るぞー」


 目的のものその1を見つけたってことで早速収穫と目の前のイチゴに手を伸ばす。普通のイチゴより一回り大きくて瑞々しくて美味しそう。きれいな赤色をしている。ただ一つ気になるのはなぜか下に垂れるようになっているのではなくて上を向いて身がなっていること。まるで先っちょで俺のことを狙っているみたいで……あれ?

 なんか見たことある流れだぞ。

 バシュッと軽い音と同時に視界が赤に染まる。イチゴの甘い香りが文字通り顔いっぱいに広がる。地味に高速で飛んできたからいかに探索者と言えど痛いものは痛い。というか、収穫しようとしたら顔面目掛けて飛んできて破裂するって何?ふざけてるだろ。

 散々だわ、今日。というか、このダンジョンまじで人のことおちょくってばっかで……


「ふざけんな、ボケェー!!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る