第8話 プリン(試作)
ダンジョン産の砂糖と牛乳を買ってきた。
やはり人間は美味しい食材には目がないということでやたらと高級だが景気良くまとめ買い。普通の牛乳の3倍ぐらいの値段したけど……。
モンスターを倒して得れる魔石やドロップじゃなく、ダンジョン食材の採取などで生活している探索者もいるぐらいだから市場にそこそこの種類と量のダンジョン食材が出回っているのだ。
もちろん市場の中では最高品質のもの。これらより高級の食材やさらに美味しいダンジョン産の砂糖や牛乳はあるにはある。けど、今回は王鶏の卵を使う予定なので味を潰し合わないように市場の物にした。わざわざ、また違うダンジョンに下層まで潜るのが面倒とかじゃないよ。チガウヨ。
「にしても、疲れた」
今日はベッドから動き出したのは昼過ぎだった。別に夜遅くまで起きてるわけじゃない。だけど、何も予定ないしついつい二度寝したりしてしまうのだ。最近、布団にも実は魔力があるんじゃないかと思い出している。
結論、毎日ちゃんと起きて学校行っている聖が偉い。何でアラームもなしに同じ時間に起きれるのか分からない、不思議だ。
「疲れた……眠い」
昼飯食って、わざわざ外出てダンジョン食材店に買い物に行ってきた。しかも、2日連続の外出だったんだ、昨日は事務所とダンジョン今日は食材の買い物。
俺偉い、まじ偉い。よく外出た。
てことでちょっと寝て良いよな、な?いや、せめて洗濯とか家の用事終わらせてからにしよう。また聖に「どうせ家居るんだからそれくらいしてよ」と言われてしまう。それだけはあってはならない、絶対にだ!!
寝てた。
いつの間にか窓からは夕陽が差し込んで来ている。あの後、何とか家の用事だけ終わらせてソファに横になったんだ。不可抗力だ、仕方ない。
今日一日の活動時間の短さに情けなくなる心の辛さに反して、体は素晴らしい睡眠によってやたらすっきりとしている。
ぐーっと背伸びして気分を切り替える。
学校終わってそのまま帰ってくるならもうそろそろだと思う……けど、その前にプリン作ってみようか。今から作れば晩御飯のデザートには間に合うでしょ
ダンジョン産の砂糖を鍋にかけてからめるソースを作っていく。王鶏の卵は一個で普通の卵の四個分ぐらいだからプリン八個ぐらいできるかな?そしたら、カラメルソースの砂糖は100gほどでいいか。
ダンジョン産の砂糖はしっかり甘いのにくどくなく料理にもお菓子にも最適という無敵っぷり。普通に作るにはグラニュー糖がいいと思う、まぁ砂糖の種類は好みだよね。焦がさないように中火で温めていく。砂糖が程よく解けて色づいてきたら焦げ付くことがないようにゴムベラで混ぜながら様子を見る。色づいた後は少し目を離すとすぐに焦げてしまうには要注意。
濃い茶色になったら砂糖50gに対して小さじ2ほどの水を加える。色を見てとか少し白い煙がとか色々あるけどこれもカラメルソースの焦がし具合は好みだと思う。カラメルソースを作っていた鍋の火を止め、あらかじめ水を張っていたボウルに一瞬だけ浸けて火がこれ以上入るのを防ぐ。おれは苦めのカラメルソース好きだけど聖は少し甘いくらいがいいらしい。どっちを優先するなんて……ねぇ。
「ふんふん、ふ~ん♪」
カラメルソースが固まる前にプリン型に注ぎ入れていく。お、ちょうど八個だ。
料理していると自然に鼻歌とか歌ってしまう。基本的には俺が家の全ての家事をしている。しかし、お菓子作りは久しぶりだから思ったより楽しい。
オーブンを先に150℃ほどに加熱しておく。このオーブンも例にもれず魔石発電機をもとに動いている。魔石様々だー。自らを農家だと主張する筋骨隆々の探索者たちがとってきたであろう牛乳を準備します。草食動物系統のモンスターは基本的に餌でもあげとけば牛乳取ったりしても怒らないので比較的簡単に素材、もとい食材が採れる。でも、普通の農家はまずダンジョンに行かないし行ったとしてもこんな高級品採れるような層に行かないんだよなぁ。農家って何だろう。
鍋に牛乳800ml、生クリーム200mlそして好みの量のバニラビーンズを加えておく。容器的にこれぐらいの量でいいとも思うんだよなぁ。本当の事を言うと、お菓子はしっかりと量るのがいいんだけど、まぁとりあえず試作だしね。
そして、正式名称は時空間独立式うんにゃらかんにゃらこと魔法の箱からメインを取り出す。出ました、王鶏の卵!でかい。ダチョウの卵とかそのレベルだろこれ、鶏だけど。どうやって割ろうか苦戦しながらなんとかこぼさずボウルに入れる。きれいな黄色だ、そして卵黄もふっくらしていて新鮮そのものだ。素晴らしい、わざわざ半日かけて取りに行ったいがあった……半分説教だったけど。
卵を泡立て器で混ぜていく。ここで大事なのはあくまで混ぜるであって泡立てではない。白身を切っていくように黄身と全体をしっかり混ぜる。混ざったら砂糖を160g加えこれもざっくりと混ぜる。鍋に準備していた牛乳たちを50℃になるまで弱火にかける。温まったら数回に分けながら卵に鍋に中身を加えて混ぜ合わせていく。
できたプリン液をざるでこしてさっきカラメルソースを入れたプリン型に注いでいく。オーブンの天板に並べて水を注ぐ、クッキングシートと濡らしたタオルもかぶせておく。後は温めていたオーブンで30分ほど蒸せばいい。
「プリンできたっ?」
「うおっ、びっくりした」
いつの間にか帰ってきた聖が後ろからひょこっと顔を出してきた。全然気づかなかった、いつ帰ってきたんだ。
あ、待ちなさい。オーブン今入れたばっかだし熱いから開けようとしない。ちょっと待っときなさい。というかまだ制服じゃないか着替えてきなさい!
蒸し終わって粗熱が取れてから冷蔵庫で冷やしておいた。
ちなみに晩御飯は普通の食材を使ったカレーにした。作るの比較的適当でいいから楽なんだよね。そして、お待ちかねのプリンです。どうですか聖ちゃん?
「うん、美味しい!……でも、私のアイス」
ごめんって……。そんな食べたかったの、温泉饅頭味。
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