第7話 再び東京第三事務所所長
「で、この明らかにおかしいレベルで潰れたくちばしですか」
長谷川さんが目の前でやや声に怒気を込めながらジトッとした目を向けてきてる。
卵をたくさん回収してこれで聖にプリン作ってあげよーってほくほく顔で帰ってきたとこまでは良かった。依頼完了の報告をしようとしたらひしゃげた……というか潰れた王鶏のくちばしを見て受付の人がフリーズしてしまったのだ。
なんですか、これは?と聞かれてもくちばしですけどとしか答えられないじゃん。そしたらなぜか上に連れていかれて会議室というか応接室のような一室で長谷川さんからの絶賛説教中なわけだ。
「—あのですね、討伐してくれたことも魔石を回収してきてくれたこともありがたいですよ。でも、相原さんなら基本的にくちばしがドロップすることもそれが素材として優秀なことも知ってますよね!それなら、—」
しばらく続きそうだな、これ。
「―大体、近衛たちの魔石やドロップも回収してないってそういうことですか?別にすべて回収しなきゃいけないって義務はありませんけど組合的には」
「おーう、奏!おかえりぃ……なんでそんなぐたっとしてんだ?」
ノックもせずに所長(残念)が入ってきた。
「聞いてください所長!相原さんが自分の目当ての卵だけ丁寧に回収してきてあとは全部だめだめだったんです!!」
「あっはっは!どうせそんなことだろうと思ったよ」
いいじゃないかと凜華さんが長谷川さんをなだめてくれたおかげで説教が終わった。感謝だな、まぁ俺が悪いんだけど。
王鶏はそこにいるだけでその階層を自らの近衛たちと共に支配してしまうため探索者からしたら通り抜けていくのに邪魔ったら仕方ない。しかし、王鶏を狩ろうとしたら周りの取り巻きも同時に相手にしないといけないため敬遠されがちなわけだ。周りを無視して王鶏だけを狩る選択肢もあるが王鶏本体もあの大きさとなかなかの速さときた、そう簡単に倒れてくれない。一瞬で狩れるほどの実力がないと周りが寄ってくるため厄介この上ない。
「久しぶりに王鶏とその近衛たちの素材が入ると思っていたのに持って帰ってきたのは魔石一つと素材として使えるかもわからないくらい潰れたくちばしですよ……」
「いや、ほんと、その……すんません」
居たたまれなくなってきた。次はもうちょっと真面目にサービスして依頼受けよう、そうしよう。いつもごめんなさい長谷川さん。
「それはさておき、奏。どうしても聞いておかなきゃいけないことがある……」
さっきまでへらへらしていた顔を引き締めた凜華さんがそう切り出してきた。ぱっと見はこのダンジョンに異常があったわけではなさそうだったから何か極秘に依頼でもあるのかと気を引き締める。誰かがゴクリとスバを飲み込む音が聞こえるような緊張感が三人の中で走る。
凜華さんは目を閉じてゆっくりと息を吸って口を開いた。
「プリンアラモード作るのはいつだ?」
所長……と長谷川さんのため息がはっきり聞こえてくる。
おい、誰かこの
「まずはプリンだよな。卵、牛乳、砂糖、生クリーム……あとは」
「ただいまぁ」
家に帰って洗濯や掃除を済ませた後、ほかに必要なものをピックアップしておこうと考えていたら聖が帰ってきた。
ガチャッとリビングに聖が入ってくる。かわいい……おっとつい本音が。
「おかえり」
「ただいま、何書いてんの?卵、牛乳……あぁ、約束した」
「そうそう、卵はとびきりのが手に入ったからね。牛乳と砂糖はダンジョン産のものでもすぐ手に入るしね」
「めちゃくちゃ高いけどね。ま、私の金じゃないから別にいいんだけど~」
そう言いながら自室に荷物を置いて手を洗いに行く聖。お兄ちゃんは可愛い妹のためならお金は惜しまないんだよ。
今度の週末にプリンアラモードは作るとして、一度プリンは作って練習しておくか。凜華さんは……一応後で連絡しておいてあげよう。
「聖、プリンアラモードの上に乗っけるの何がいい?サクランボとか、ほかには」
「んー、まずサクランボといちごでしょ。あとキウイも食べたいなぁ、贅沢にメロンもいっちゃおう!」
「いや、そんなにたくさん……すぅ、例のダンジョンに行けと」
「私のアイス」
「喜んで行かせていただきます」
愛する妹のためだ、たとえどれだけめんどくさいダンジョンであろうと行くしか選択肢はない。決してまた口きいてもらえなくなるのが嫌だとかそういうわけではない。聖に無視されたら生きていけないとかいうわけではない、違うよ?
あ、凜華さんもプリンアラモード食べに来るの聖にも言っとかないと。
「凜華ねぇ来るの?会うの久しぶり、楽しみ」
「もう姉って年齢じゃ「言ってみな、本人に」
絶対無理……。
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