第3話 いざ、体入へ

「お金がほしい」

始まりはそんな【普通】の理由でした

当時20歳の私には、洋服に美容にあれもこれもと欲しい物だらけで、お昼のバイトだけではお金が追いつかなかったのだ


とはいえ夜のお仕事は未経験だったので、初めての体入は中学時代の友人りなと一緒に行くことになった


【体入】とは体験入店のことであり、学生の時に行った職場体験のようなものである


体入のお店は地元の繁華街を選んだ

バチバチに決めた化粧にミニスカート、高いヒールでばっちり決めた私は【戦場】へとむかう

お店はビルの3階にあった

どこからどうみても普通のビルなのに、扉の中は煌びやかな内装に音楽まるで別世界のようだった


面接を担当してくれたのはマネージャーの唐沢さん

背が低く、目が綺麗な男性だ

かわいい顔をしていたが低い声が印象的で、「しっかりお客さんを楽しませるように」ってよく言ってたっけ


名前や住所の記入、経験の有無などを聞かれ、身分証明書の提示などを済ませたら

源氏名を決めることになった

源氏名とは芸名のようなものだ

自分で決められるので作者名でもあるmiyukoに決めた


キャバ嬢【miyuko】が誕生した瞬間だ

いつもとは違う名前に少し恥ずかしさもあったが、新しい自分になったような気がして嬉しかった


面接が終わったあとはいよいよドレス選びだ

体入用のドレスが用意されているが、自前を用意しても良い

キャバ嬢未経験の私はお店で借りることにした


初めてのドレスはピンク色のミニドレス

今の私が着たら放送事故になるだろう

だが当時の私にはよく似合ったていた、、と思う


ドレスを着たら、次はヘアセットだ

お店には専属のヘアメイクさんが2人いた

一人は小さな美容院を営むゆかさん

20歳と18歳の娘がいる2児の母で、営業後にここのキャバクラでで働いていた


もう一人は川田さん

3児の父であり、見た目はチャラそうな男だが話すとおっとりしていていてとても話しやすかった


この日はゆかさんに担当してもらい、私のイメージに合わせてハーフアップの巻きおろしにしてもらった



そして準備が整った頃、ノックの音が聞こえた

ドアが開き、1人の女性がヘアメイク室にはいってきて声をかけられた

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