第30話 口輪のワンちゃん

初めての方からワンちゃんのお世話のご依頼をいただきました。

お打合せに伺いました。

玄関のドアが開いた途端に吠える声が聞こえました。

お部屋に入るとワンちゃんは警戒してすごい剣幕で吠えていました。

チワワちゃんです。

お世話の仕方を聞き取りしている時もずっと吠え続けていました。

まともに話が聞き取れないような感じで終わりお散歩の練習に行くことになりました。

私がリードをつけられる状態ではないのでお家の方がリードをつけて、リードを持つのもお家のかたで私はお散歩の様子を見ながらついていきました。

私の方を見ながら時々吠えかかりながら警戒して歩きます.

ひっきりなしに振り返って私を威嚇しながらなんとか短いお散歩練習をしました。

果たしてお世話が可能なのかわからないので、後日改めて私がお散歩できるかもう一度試してみることにしました。

その日玄関を開けるとリードをつけたワンちゃんがお家の方と一緒に出てきました。

私を警戒して噛みつきそうな勢いです。

お家の方はワンちゃんに口輪を装着しました。

これで噛まないと思いますと。

玄関で見送るお家の方からリードを受け取ってお散歩に出発しました。

20メートルほど行ったところでワンちゃんは立ち止まりました。

そして両方の前足を顔に持っていきました。

何をするんだろうと思ってみていると、器用に前足を使って頭を左右に動かしながらマズルについている口輪を外してしまいました!

ビックリしました。

自分で外すことできるんだ...

口輪を外したら私に襲いかかってくるのかと思いましたがさすがにお家の中ではないのでそれほどの縄張り意識もないようで歩き始めました。

しかし、私への警戒心が強く振り向いてばかりで一向にお散歩は進みません。

いくらも歩かないうちに止まってしまいました

私がリードを引いてもうちょっと歩こうよと言ってもついに動かなくなりました。

そしてすごい勢いで今来た道を戻ってお家に帰ろうと走り出しました。

この間ほんの10分ほどです。

お家に戻ってリードをお家の方に渡すとまた大きな声で吠え出しました。

早く帰れ!と言っているようでした。

そのワンちゃんは誰がきても帰るまでずっと吠えているとのことでした。

なんとかお世話できないかと頭の中で色々策を巡らせましたがどうも出来そうもないという結論になり、お家の方に説明してお断りさせてもらいました。

噛み付くワンちゃんや臆病なワンちゃんなど色々見てきましたがお世話出来なかったのはこの子だけでした。

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シッター日記 @kiro3chiko3

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