第18話 タロちゃんのこと

タロちゃんのこと


タロちゃんはミックスのワンちゃんです。長い足で軽やかに歩きます。

とても頭のいい賢いワンちゃんです。

お家が道沿いにあるのですが、表の扉を開けると直ぐそこが道路で車が通るのでそこからは外に出てはいけないことになっています。

ドアが開いていても決して外にでません。

お家の裏のドアを開けると広い駐車場です。

そちらから駐車場には出ていいのですが、駐車場から道路には出てはいけないと躾られています。

柵があるわけでもなくそのまま車で道路に出ることができるのですがタロちゃんはそこらかも決してでません。

タロちゃんはお留守番の時は外に繋がれています。

あるお世話の時私が駐車場に到着すると繋がれているはずのタロちゃんが駐車場の中を悠々と歩き回っています。

顔が生き生き晴々しています。

自由を満喫していたようです。

見ると切れたチェーンを引きずっています。

繋がれているのが嫌で引っ張ってチェーンを切ってしまったようです。

私はびっくりしましたが、タロちゃんがどこかへ逃げてしまう事なくちゃんと駐車場の中にいてくれたことに安堵しました。

タロちゃんは、はしゃいでで走り回っていましたがお散歩のリードを見せるとちゃんと付けさせてくれてお散歩もできました。

お世話が終わると、別のワイヤーリードでタロちゃんを繋いで帰りました。

お家の方もタロちゃんがチェーンを切ってフリーになっていたことを報告するとそんなに慌てる様子もなく短く繋いでおいてください、という感じでした。

お家の方がお留守でも駐車場から道路に出てはいけないということをちゃんと守るんだ!

なんて賢いワンちゃんなのだろうと感心しきりでした。

そしてしつけは大切だなぁ!と思いました。

タロちゃんはお散歩中も他のワンちゃんに反応したり歩いている人に反応しません。

お散歩中、他のワンちゃんが近づいてきても避けて通ります。

でもある日自転車を引いて歩いている男性に会うと嬉しそうに近寄っていきました。

そんなタロちゃんを見たことが無かったので驚いているとその男性は

「おお!タロか!」と言って止まり私がお散歩しているのをみて、「今日はお父さんじゃないのか?」と聞きました。

ペットシッターであることを話すと

「タロ、パンたべるか?」と言って袋から食パンを出して千切ってタロちゃんに差し出しました。

私はタロちゃんがやたらに何か食べるワンちゃんでは無い事を知っているので内心、パンなんか食べませんよ!という気持ちでいました。

ところがタロちゃんはパクパクと美味しそうに食べるではありませんか!

タロちゃんはお世話に行っても前の日のご飯がいつも残っています。

タロちゃんにお散歩用のリードを付けるとご飯を食べてくれます。

お散歩してくれるならご飯たべるよ!と態度で示しているのです。

リードを付けると「約束だから食べるね」って感じで、「さっさと食べちゃわなくちゃっ」と急いで食べます。

早くお散歩に行きたくてまだご飯んが残っていても残したまま行こうとします。

もう少し食べようね、と言うと仕方なしに全部食べます。

おやつも気が向かないと食べません。

そんなタロちゃんが食パンをパクパク食べる意外な姿に私はビックリしました。

「タロ、もっと食べるか?」とその男性は袋からもう一枚食パンを出すと

タロちゃんはペロリと平げました。

「もうないよ、またな!」と言って男性は立ち去りました。

タロちゃんは食パンが好きなんだ!私はタロちゃんの好きな物を知りました。

あの男性はなんで食パンを持っていたのか?

公園の鳩にやるのか?池の鯉にやるのか?

結局分からずじまいでした。

でもタロちゃんはパンをあんなに勢いよく食べるんだ!となんだか感動しました。

お家の方にこの出来事を報告すると、

「タロはパンが好きなんです」ということでした。

パンを与えた男性はお散歩中よく会う方だったようです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る