第10話 不憫が似合うと評判な悪役令息

-side ジークハルト-




「はああああああ……」

「どうしたのだー?」

「これからウィリアムとパーティだ。どんな無理難題言ってくるか分からないし、世界一嫌なイベントが始まる」

「大袈裟なのだー、大丈夫なのだー」



 ウィリアムから命じられた面倒極まりない放課後のパーティである。陽キャとのパーティなんて何を言われるのだろうか?嫌な予感しかしないし、行きたくなさすぎる。



「パーティ楽しいのだ!大丈夫なのだー、いざとなったら我が守るのだ〜」

「気持ちは助かる」



 うーん。ズンドラゴンさん。戦闘力としては申し分ないが、ゆるゆるガードという面においては完全にまだ信頼できていない。



 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



 パーティの会場である生徒会室のドア前へつく。気は進まないがそうも言ってられない。深呼吸をした後、意を決して中へ入る。



「失礼します」

「来たのだ〜」



 中央に王子がドス黒い人外の雰囲気を纏っていた。後ろのヘンリーは部屋の隅で気配を消し、空気になっている。な、な、何この地獄の雰囲気?

 俺、なんかやらかしてたか?



「いやー、なに?ちょっと生徒会の方で腑抜けが何人かいたからしばきたくなってね……、機嫌が悪いだけだよ」

「俺関係ねえのかよ!?」

「ご主人様が不憫なのだ〜!」



 ズンドラゴンもぷんぷんと怒って抗議をする。いや、これは怒っているというかただ実況している?それはそれとして、完全にとばっちりだろう。



「ごめんごめん。もう大丈夫だから。君たちを見たら機嫌治った」

「そうか」



 俺としてはケロッとその纏っていたドス黒いオーラが一瞬でなくなった事がもはや恐怖の対象である。

 戦闘力では圧倒的に俺が強いが、人を威圧するとか恐がらせるとか、上に立つ能力はウィリアムの方が上だろう。

 頭もいいし、あっという間に手のひらで転がされそうだ。……というか、もう転がされている。



「そういえば、そちらが今回ジークハルトの従魔になったというエンシェントドラゴンか?」

「そうなのだ〜!ズンドラゴンというのだ〜!よろしくお願いなのだ〜!」

「こちらこそよろしく!それはそれとして、今日は特別にズンドラゴンが好むというずんだ餅を用意したよ。お口に会うといいんだけど……」

「香りからして好きなずんだ餅の感じなのだ〜!嬉しいのだ〜、お前いい奴なのだ〜」



 ズンドラゴンなんか買収されてない?

 腹黒を極めているウィリアムに貸し作るの怖すぎるんだが?

 その後、俺にもお茶とお菓子を出してくれる。雰囲気も出てくるものも大体はアフタヌーンティーである。

 ウィリアムは意外にも丁寧で物腰柔らかく、優しい対応をしてくれた。

 スコーンにサンドイッチ、紅茶にチョコレートケーキや、ショートケーキ。

 生徒会室というこじんまりとした場所ではあるものの、パーティと称しているだけあって、出てくるものは全て美味しく、自然と肩の力も抜けてくる。

 そんな時、ウィリアムが真面目な顔をしてこちらを向いて話しかけた。



「さて、それで本題なんだけどさ」

「……!」



 --きた。やっぱり何かあるのか。

 そりゃそうか。流石のこいつでも用事もないのに俺を呼ぶはずがない。



「早速だけどさ、君にデズモンド公爵家の当主代理をやってもらいたいと思っている」

「あ?」



 デズモンドの当主は今現在父上のポチ=デズモンドがになっている。当主代理なんて、今の絶対的権力者状態の父上に黙ってそんな事できるはずがないのだが?



「大丈夫、君の父上には近いうちにご退場願うからね。フフフフフ……」



 時々思うんだけどさ、なんでこの人が悪役側ではないんだろうか?

 俺なんかよりもよっぽど適任だと思うんだけどこの人。主人公体質なだけで、性格的にはどう考えても悪役向きなんだよなあ。



「それで頼まれてくれる?」

「断る選択肢なんか用意してないんだろ?どうせ」

「まあね。相変わらず不憫が似合う」

「不便を着せてるのはお前だろーが!」



 怒ったところで無駄なのだが。

 半分くらい諦めて、続きの計画を聞く事にしたのだった。



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「ダンジョン工房〜所属していたブラッククランが爆散して生活が一変したのでシロ市民なモブとしてスローライフを送ります〜」


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