第7話 戦闘で高評価を受けた悪役令息

-side ジークハルト-




「なんとか、無事に終わってよかったね。ジークハルト君」

「ああ。良かったな。ありがとうアリス。エリーゼにセバスも」

「こちらこそ。一時はどうなることかと思ったけれど」

「ですねえ。本当にピンチを救っていただきありがとうございます」



 ダンジョン探索の課題を終えた俺たちは休憩時間に一緒にお昼ご飯を食べていた。ぼっち飯ではない昼休憩をしたのはいつぶりだろうか?誘ってくれたアリスに感謝である。



「課題……、ダントツでトップで良かったね」

「ああ……、それで、ズンドラゴンのことだけど」

「わかっているわ、当分は秘密ね。エンシェントドラゴンを従えたということなら、もしかしなくても国が動く自体だもの。慎重に動くべきだわ。まずは、ウィリアム殿下に相談ね」

「うげえ……、またあいつかあ……」

「あなたねえ……、殿下に対してその物言い……」

「あっ……、まあ……、あいつの扱いなんてどーでもいいし」



 そもそもこんな呼び方をしているのも、あの腹黒殿下が、敬う隙を与えてくれないせいだ。あやつ、出会った時から俺を振り回し続けて、こっちも迷惑を被っているのだ。これくらいは許してほしい。……まあ、この反応すら、友達とは対等にいたいという、あいつの手のひらの感は否めないのだが。

 あーー、あいつの事を考えるだけで気が滅入りそうだ。やめだやめ。



「まあ、あたし達の前だからいいわ。殿下も許しているっぽいですからね。ただ、他所では絶対にやらない事!よろしくて?」

「あ、ああ」

「あと、しっかり昼ごはんは食べる事、あんたここ最近お昼ご飯一人で食べて全然食べれてないせいで痩せてるわ」

「そ、そうか……?」

「そうね。そして夜はしっかり寝る事、クマもひどいわ」

「あ、ああ」

「では、私達はこれで」

「えっ……」

「失礼致します」



 そう言うなり、エリーゼとセバスチャンはその場から去っていった。



「……おかん?」



 ポカーン……。唖然として、思わずポツリと独り言を呟く。



「ふふっ……、ぽいよね?」



 すると、隣からアリスの声が聞こえた。



「あ、アリス」



 そうだ、アリスはまだ一緒にいたんだった。



「ふふっ……、あたしの存在忘れてた?」

「い、いや」

「まあ、別にいいよ、それよりエリーゼの言う通りちゃんと気をつけなよ?ジークハルト君、ここのところずっと無理していたでしょ?」

「あ、アリスまで……、そんなに酷かったか?気づかなかったんだが……」



 確かに思えば、最近家諸々で忙しくて休んでる時間もなかった気がする。今の今まで気づかなかったな。



「うん、ずっと心配してたよ、やっと言えてよかった」

「そっか、ありがとう」

「うん……」



 --シーン。その後、会話が一旦途切れ、お互いに沈黙する。

 こう言う時、気の利いた話題を出して楽しませられればいいんだが、あいにくそんなデッキは持ち合わせていない。

 くっ……!



「じゃ、じゃあ、もう行くね!」



 そうこうしている間に気まずさに耐えかねたアリスが席を立った。



「あっ……!アリス!」

「えっ……!?」



 しまった……、思わず引き留めてしまったが、何をしてしまったん!?俺!?



「その……、また、な」



 そういうと、アリスは天使の笑顔を浮かべ、「うん、また、落ち着いたら連絡待ってる!」と返してくれた。やっぱり、あいつは天使かもしれない。



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