第5話 初見は帰れなのだと言われてしまう悪役令息

-side ジークハルト-




「それではこれより、グループワークを開始します」



 今俺たちは、学園内にあるダンジョンにいる。学園内のダンジョンと言っても侮るなかれ。ダンジョンの下層にはドラゴンもいるし、その他競合もわらわらいる。



 先生の合図で、いつも通りダンジョン探索の授業が開始される。

 いつもと違いところといえば、生徒会メンバーであるアリス、エリーゼ、セバスチャンが一緒にいると言ったところか。

 周りからは、どうやら俺が悪いことをしないようにするための監視だと思われているらしい。俺もその線を疑ったが、そんな雰囲気でもなさそうだ。

 本当に何が目的なんだこいつら。



--コソッ!

「ちょっと……!セバス!一緒に来たはいいものの、ジークハルトといえば、今や性根腐ってて、めっちゃ問題児で有名な奴じゃないの!?アリスったらなんでこんなやつに惚れちゃったのかしら?どうするよ?」

「えぇ……、2人の恋愛模様見ようって言ったのエリーゼ様ではないですか?私知りませんよ……」

「それは、見たいわよ。幼馴染カップルの恋の行末は」

「まあ、分かりますが……、この状況、一旦、様子を見るべきかと。いざとなったらジークハルト様を使って逃げればいいだけの話ですし、戦闘は主席なので課題にフロアの攻略は問題ないでしょう」

「逃げれるかしら?あの怪物相手にそんなこと」

「出来るではありません、やるんですよ。やるしかないんですから!」

「はあぁぁぁ……、大丈夫かしら、こんな状況で」



「……おい、そこの2人、始めるぞ」



 俺様はタイミングを見て2人に声をかける。



「わ、わかったわよ」

「かしこまりました」



 俺様がいないところで、何やら2人が打ち合わせをしているようだった。大方、俺の悪口でも言っているのだろう。エリーゼの親友であるアリスが絡んでいるとはいえ、急に問題児の俺とグループワークなど仕方ないことだとは思う。



「頑張ろうね!ジークハルト君!」

「ああ、アリス。頑張ろうな」



 俺の噂を知って、なお優しくしてくれるアリスはまじで天使か何かだろう。将来は幸せな生活を送って欲しいものだ。



--コソッ

「くーーーっ!見たかったものが見れてますわ。空気が美味しいわ」

「恋する乙女と気付かない鈍感男、中々に甘酸っぱい光景が見られています。これだけでも来てよかったです」

「ほんとよ」



 そして、後ろでは何やらコソコソとエリーゼとセバスチャンが話している。

 おそらく、アリスに声をかけている俺に対して警戒をしているのだろう。俺の事をまだ信じられていないのは当然だ。少しでも、疑いを晴らすために誠実な対応をしなければ……。



 そんな事を思いながらも順調にモンスターを倒しながら進んでいく。



「……?それにしても、さっきからモンスターに会わないね」

「ああ、俺が倒しているからな」

「えっ……!?」

「む……?」

「どういうことですの?」

「あ、ああ。つまり、索敵して遠距離魔法でパパッとな。みんなを危険に晒すわけにもいかないし」

「「「……」」」

「ふぇぇ!?知ってはいたけれど、ジークハルト君、やっぱりすごいね」

「別に普通だ」

「ううん……、やっぱり努力家だよ、ジークハルト君は」

「……そうか」



 アリスはいつでも俺の努力を見てくれる。

 本当にまじ天使の生まれ変わりなのではないかと毎回疑ってしまう。



--コソッ

「どうするのよ、セバス。さっきいざとなったら逃げれるって言ってたけど、無詠唱で複数魔法同時に使える化け物相手にあたしたち無力よ」

「こうなれば、いざという時にはこちら側に寝返りますか、そちらの方が安全でしょう」

「そうねえ。こんな化け物、この国に2人しかいない賢者くらいしか相手にならないのではないかしら?」

「ですねえ。しかも、その2人が今現在消息不明な以上、ジークハルト様に勝てる人物などこの国へいないのかと」

「じゃあ、確かに寝返るのが正解ね。私が多少の悪いことをしたところで、私のお父様も揉み消せるでしょうし」

「ですねえ」



 後ろの2人には、何やら驚かれているようだ。別にこれくらい出来る奴はこの学校外にならたくさんいると、俺の魔法の師匠も言っていたしなあ……。普通のことだと思うけど。



 --ビクッ!!

 む?この感覚……、このフロアの奥の方に強いドラゴンがいる気配がするな。そして、この感じ……。



「初見は帰れなのだー!」

「危ない!!」



 この感じ、相手のドラゴンが俺たちに気付いて先手必勝と言わんばかりのドラゴンブレスを放とうとしているみたいだったので、他の3人を別の場所へ転移させる。



「むむ?まだ、生き残っているのだ。不可解なのだ。でも、次で仕留めるから大丈夫なのだ。ドラゴンビーーームなのだ!!」

「いや、ドラゴンならブレスを放てよ」



 ドラゴンはそう言うと、ドラゴンビームを放ってきたのだった。中々の高火力である。



「事前にある程度分かっていない状況で、これ避けるの無理ゲーすぎるだろ」



 索敵能力がある俺にとって避けるのは容易ではあるが、言葉通りに初見殺しすぎるこのドラゴン。



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