Ⅳ
「――蒼空様!!」
大和が蒼空に向かって手を伸ばす。だが、突如起きた災害を防ぐのが精一杯で、その場から身動きが取れない。
「僕の手を掴んで下さい!!」
並行して走っていた春宮が伸ばした右手に蒼空が間一髪で掴み、何とか事なきを得る。
「蒼空様!! お怪我は?!」
蒼空の下へ駆け足で近付き、彼の身体に傷がないかとあちこち確認する大和。
「なんとかね」
無事なことに安堵したのか、くるりと春宮の方へ向き直る。それから、燕尾服の内ポケットから何やら取り出すと、頭を勢い良く下げ両手を差し出す大和。
「春宮殿!! 感謝を!!」
そう大袈裟に感謝を述べる大和の手には、札束が1つ。数えるに100万はある。
「い、いえ。無事ならそれで。あと、お金は大丈夫です怖いです」
「左様ですか……」
少し不満そうに札束をしまう大和。そのやり取りに『そりゃそうでしょ』と心の中でツッコんだ蒼空は、破壊された森の一部に視線を戻す。
「これは……酷いですね」
「はよ助けに行ったらなやばいんとちゃうか?」
「私奴もそう思います。すぐ参りましょう」
森の入り口を塞ぐように薙ぎ倒された木々。その近辺から巨大生物を見上げる槍壱と大和。
「もう死んでんじゃねぇか?」
「生きてる可能性はある」
ヤクザのマイナスな発言に対して、希望を捨てない少女の父親。
「あ、あのさ……君たちに渡したいものがあって……いいかな?」
失態続きの少年が、おどおどした態度で会話に割り込む。蒼空たち一同は『次はなんだ?』と眉を
「その、本来なら全員集まってから渡そうと思っていたんだけど……」
少年は指をもじもじさせながら、チラチラと蒼空たちの様子を窺う。また彼らに怒られたり呆れられたりされないかと心配しているようだ。
「で、なんやな。その渡したいもんって」
「えっとね、それは【
「【スキル】? はて、どういったものなのでしょうか?」
大和は首を傾げながら蒼空に問う。
「あれだよ、あれあれ。あのアニメとか漫画でよく聞く“
蒼空たちの会話を余所に、少年はその【スキル】とやらを授けるための準備に取り掛かる。しかし、準備と言ってもただ目を瞑り呪文を唱えるだけ。魔法陣は出現せず、それよりも少年の手の平から眩い光の玉が、無数に宙に浮き上がる。
「わぁ……綺麗!」
宙に浮かび上がる光の玉に、初めて可愛らしい笑顔を見せる少女。
「さあ、好きなのを1つ選んで!」
「好きなんって……どれが、なんやねん!」
槍壱が、光の玉の1つにツッコミを入れると、それが彼の体内に入り込み眩い光を放つ。
「な、なんや!? …………って、なんも起こらんで」
「[
少年に言われた通り槍壱が[ステータス]と念じると、Smartphoneより少し大きい
槍壱は少し身体をびくつかせたものの、すぐに落ち着きを取り戻して、まじまじとそれを眺める。
「なんやゲームみたいやな」
飲み込みが早いのか、表示されたディスプレイを横に
そこには――
【
*
【
*
【
*体術A
*武術A
*槍術B
――など、少年が言っていた【スキル】の他にも沢山の項目が記載されていた。
「他にもなんや色々あるみたいやけど、この【ユニークスキル】“神速”ってやつ特に気に入ったわ! なんせ、笑いには速さが命やからな! って、なんでやねん!」
「それはよかっ――っ……たぁっーーー!!」
「……って、こんな……風に……」
軽く振ったつもりの槍壱の右手に【ユニークスキル】“神速”が使用され、少年の腹にめり込むと、果てしなく続く草原の彼方へと吹き飛ばされていく。
「あらー…………」
広大な草原へと吹き飛ばされていく少年を眺めながら「めっちゃ飛ぶやん」と呟く槍壱。
「やっぱりお仕置きはやめてあげようか」
「珍しく意見が合うな」
槍壱のおかげか、初めて意見が一致したヤクザと少女の父親。その様子を見ていた蒼空と他の一同は、宙に浮いた光の玉に触れ[ステータス]と呟くと、各々、自分の【スキル】などを確認し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます