Ⅳ
未だに煙幕内に囚われている少年。手加減をしたつもりが『やりすぎた』と様子を窺うも、視界を遮られていて状況の把握が出来ないでいた。
「鬱陶しいなあ」
少年が、右の手の平で軽く一振りすると、瞬く間に煙が払い除けられる。
煙が一瞬にして晴れたことに驚いた蒼空は、耳に付けていたBluetoothに手を添え『撃って』と指示を出す。
その指示を受けたのは、ビル4棟に配置されているスナイパーたち。
黒染め仕様のそれは、全長1118mmで銃身610mmと長く、口径は7.62mm。重量は4200g、有効射程は800m〜1000m。装弾数は5発。
国産で唯一の大口径ボルトアクションライフルで、その名も“
スナイパーたちは、銃床を右肩に当て、
600m離れたビルから.308Win弾が、1発ずつ間を置いて、計4発、撃ち放たれた。
だが少年は、自分に向かって飛来する4発の弾丸に「Shall we dance?」などとふざけた言葉を交わすと、Step&Turnを繰り返し華麗に躱していく。
スナイパーたちは「有り得ない」と呟くと、すぐに銃のボルトハンドルを起こしてロックを解き、ボルトを手前に引いて
再度、ボルトを前方に押し薬室に弾薬を装填すると、ボルトハンドルを倒して薬室を閉鎖する。
もう一度、少年に照準を合わせ胴体に狙いを定めると、一斉にトリガーを引く。しかし、それも虚しく、彼には1発も当たらない。寧ろ、弾の方が逸れていく。
「ちゃんと狙いなよ」
少年は、スナイパーたちがいるビルの方角に手を振りながら余裕の笑みを浮かべる。彼らは、人間では有り得ないその動きに「なんなんだ」と声を漏らすと、次は胴体ではなく頭部に向かって一斉射撃をする。
「殺意満々だね」
まるで愉しむかのように、スロモーションで飛来する弾丸を顔ギリギリで逸らし躱していく。その様子に蒼空は『これもか……』と歯を食いしばる。
再び、Bluetoothに右手を添えて「撤退」と指示を出すと、別の部隊に「突撃」と指示を出す。
その指示の下「突撃ぃーーッ!」と大きな声と共に、屋上にある非常階段の扉が蹴り破られる。
流れ込むように出てきたのは、安全靴に似た“警備靴”を履き、紺色をした綿性の“出動服”の上にポリカーボネート製の
頭にはポリカーボネート製の
3人の機動隊の左手には、ポリカーボネート製の厚さ8mmの
また彼らの右手には、長さ60cm、直径3cm、重さ320gある警棒。アルミ合金製、伸縮式で鍔付き、振った際に滑り落ちにくいグリップ。持ち手側には、王冠状のグリップエンド“ガラスクラッシャー”が取り付けられている。
3人の背後にいる2人の機動隊は、ダットサイト、フラッシュハイダーにマウントベース、Fタイプストックが装着されたH&K社製のMP5を構えている。
少年を背後から囲むようにして、盾を構えた3人が近付き、銃を所持した2人は、少年に狙いを定めながら横移動しつつ、蒼空と大和の前に立つ。
「我々が捕らえてみせます」
そう意気込んだのも束の間――少年は、その機動隊に一瞬で近付くと「やってみなよ」と彼の腹部に深く思い切り右拳を入れる。
大いに油断した機動隊の1人は、言葉を発することなく殴り飛ばされ、蒼空の左側を横切り屋上の平場を転がると、そのまま意識を失った。
その一瞬で危険と察したのか、再び「突撃!」と指示を出すMP5を構えた1人の機動隊が、少年に照準を合わせ連射する。
ライオットシールドを構えた機動隊の3人も、少年の頭部、右足、左横腹目掛けて警棒を振り翳す。
しかし少年は、振り翳される警棒も何発も放たれる弾丸その全てを躱し切っていく。
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